住み慣れた家や地域で暮らすために存在する介護予防サービス。
介護予防訪問看護はその中の1つです。
「訪問看護はよく聞くけれど何が違うのかな」
「名前に介護予防とついているけれど、どんなサービスなんだろう」
「利用料ってどれくらいかかるのかな」
こういった疑問を解決すべく、介護予防訪問看護のサービス内容や回数、利用料などを詳しく解説します。
サービスを利用するまでの流れや利用するメリットも紹介するので、記事を読み終わるころには介護予防訪問看護を利用するか迷っている方の不安もなくなるでしょう。
1、介護予防訪問看護と訪問看護の違い
介護予防訪問看護と訪問看護の違いは対象者です。
・介護予防訪問看護の対象者…要支援1、2
・訪問看護の対象者…要介護1~5
要支援とは、食事や入浴、排泄などの基本的な日常生活動作は1人で行うことができますが、立ち座りや家事・外出などは介助や見守りが必要な状態を指します。
厚生労働省によると、要支援1と2の違いは介助や見守りが必要な時間の差です。
・要支援1…「要介護認定等基準時間が25分以上32分未満またはこれに相当する状態」
・要支援2…「要介護認定等基準時間が32分以上50分未満またはこれに相当する状態」
食事や入浴、排泄が自分でできるというのは、住み慣れた家で暮らし続けるには重要ですよね。
家族にとっても、できるだけ現状を維持してほしいと考えるでしょう。
そこで、利用するサービスとして挙げられるのが介護予防訪問看護です。
次章は介護予防訪問看護について詳しく解説します。
2、介護予防訪問看護の特徴
介護予防訪問看護をいざ利用しようと思っても、サービス内容や料金など、気になることはたくさんありますよね。
サービスを受ける本人や家族が不安なく介護予防訪問看護を受けられるよう、特徴を詳しく紹介します。
2-1、サービス内容
要介護状態になるのを防ぐため、医師の指示のもと医療系の資格を持った専門家が自宅へ訪問し、サービスを提供します。
医療系の資格を持つサービス提供者は以下の通り。
・看護師
・准看護師(医師や看護師の指示のもと、看護や診療の補助を行う専門家)
・保健師(健康に関する相談に乗ったり、生活指導をしたりする者)
・理学療法士(立つ、歩くといった基本的な動作の専門家)
・作業療法士(食事、洗顔などの応用的な動作の専門家)
・言語聴覚士(言葉によるコミュニケーションや食べる機能の専門家)
介護予防訪問看護という名称から看護師のみがサービスを行うと思いがちですが、実際は様々な医療系の有資格者が対応してくれます。
2-1-1、看護師、准看護師、保健師によるサービス内容
看護師、准看護師、保健師が提供するサービスは以下のようなものが挙げられます。
・病状・障害の観察と判断、健康管理
・食事・清潔・排泄のケア、水分・栄養管理
・傷や床ずれの処置、点滴や医療機器等の管理
・薬の飲み方指導と服薬管理
・療養生活、看護・介護方法に関する家族への助言
・家族の悩み相談
・かかりつけの医師との連絡や調整
・認知症の方の看護
要介護状態になることを防ぐことが目的のため、本人の状態や能力を観察し、必要以上のサービスは行わないことになっています。
家族の療養生活や介助方法に対する悩み相談もサービスに含まれているので、うまく活用していけば、利用者も家族もストレスなく自宅での生活を送ることができるでしょう。
2-1-2、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士によるサービス内容
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士からは以下のようなサービスが提供されます。
・血圧測定や体温測定などの健康管理
・歩行などの日常動作の訓練
・口腔体操などの食べることに関する訓練
・居室や廊下など、よく使う場所の環境整備
・福祉用具選定
歩行が不安定になったり筋力が低下したりすると要介護度が上がっていくので、身体機能の維持は介護予防には欠かせません。
介護予防訪問看護を利用すると、家にいながら専門家によるリハビリが受けられるのです。
リハビリの様子を見られるので、家族にとっては本人に合うリハビリについて勉強になりますね。
2-2、回数
不安が大きい介護生活を支えてくれる介護予防訪問看護。
できれば毎日来てほしいと思いますが可能なのでしょうか。
要支援の方は介護保険を適用してサービスを利用するので、介護保険を利用する場合の回数上限をみてみましょう。
2-2-1、看護師・准看護師・保健師の場合
看護師・准看護師・保健師が訪問する場合、回数上限はありません。
訪問時間には以下のような選択肢があります。
・20分未満
・30分未満
・30分以上60分未満
・60分以上90分未満
訪問回数や訪問時間はケアマネジャーがケアプランを立てるときに決めていきます。
ここで重要なのが介護保険の区分支給限度額。
・要支援1の区分支給限度額(1か月あたり)…50,320円(2022年12月時点)
・要支援2の区分支給限度額(1か月あたり)…105,310円(2022年12月時点)
支給限度額を超えてサービスを提供すると、超えた分の利用料は10割負担となってしまいます。
金銭的に負担が大きくなるのでケアマネジャーとよく相談して回数を決めましょう。
一般的には、要支援1の場合は週1~2回、要支援2の場合は週2~3回が目安です。
2-2-2、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の場合
リハビリに関する訪問回数は1回につき20分以上訪問し、週6回を限度とするという制限が決められています。
1回20分以上とし、週6回の制限を守っていれば、1日に40分以上のリハビリを行うことも可能です。
極端に言えば、1日に上限である120分間のリハビリを連続して行うことも可能ですよ。
ただし、1日に60分以上リハビリを行うと、訪問看護の利用料が要支援者は半額になってしまいます。
利用する側は嬉しいですが、サービス提供者にとっては大きな痛手ですよね。
法律的には問題ないですが、サービス提供者によって1日に60分以上は提供しないと決められていることもあります。
2-3、サービス提供事業所
サービス提供事業所は以下の2種類に分けられます。
・介護予防訪問看護ステーション
・病院や診療所
それぞれの特徴を紹介します。
2-3-1、介護予防訪問看護ステーション
訪問看護ステーションのサービスの1つに介護予防訪問看護があります。
訪問看護ステーションは介護保険法に基づき、都道府県知事(または政令市・中核市市長)の指定(許可)を受ける必要があります。
また、サービスを提供するために最低限の人数やどのような職種の人が必要か決められていますよ。
具体的には以下の通りです。
・サービスの提供にあたる保健師、看護師または准看護師を常勤換算で2.5名以上配置していること(うち1人は常勤)
・看護師または保健師(看護師との兼任可)の管理者を1名配置していること
・理学療法士、作業療法士または言語聴覚士を実情に応じて適当数配置すること
リハビリの専門職がいるため、介護予防訪問看護のサービス内でリハビリを提供できるという強みがあります。
2-3-2、病院や診療所
病院や診療所も訪問看護部門を設けたり、外来部門が兼任したりすることで訪問看護サービスを行えます。
上記のサービスは一般的にみなし指定訪問看護と呼ばれていますよ。
病院や診療所は保険医療機関などとしてすでに都道府県の許可を得ています。
そのため、訪問看護をする事業所として都道府県知事からの指定をすでに受けたとみなされるのです。
みなし指定訪問看護の人員配置は決められていません。
病院や診療所によって人員を自由に決めることが可能ですが、看護職以外の訪問看護は禁止されているので、リハビリを提供することはできません。
2-4、利用料
いくらよいサービスだからといっても、利用料が高いと使うことをためらってしまうこともありますよね。
利用料はサービス提供事業所の所在地やサービスの内容などによって多少異なります。
自分の場合は利用料がいくらになるのか、市区町村の窓口や地域包括支援センター、そして担当のケアマネジャーに確認してからサービスを利用することをお勧めします。
以下に1割負担の場合の1回あたりの利用料の目安を紹介しますので参考にしてください。
①介護予防訪問看護ステーションを利用する場合
・20分未満…302円
・30分未満…450円
・30分以上60分未満…792円
・60分以上90分未満…1,087円
②病院や診療所を利用する場合
・20分未満…255円
・30分未満…381円
・30分以上60分未満…522円
・60分以上90分未満…812円
上記からもわかるように、介護予防訪問看護ステーションのほうが利用料は高いです。
3、介護予防訪問看護を受けるまでの流れ
介護予防訪問看護のサービスを受けようと思ったとき、何から始めたらいいのかわからない方も多いですよね。
特にややこしい点は、サービスの提供所が介護予防訪問看護ステーションなのか、病院や診療所なのかによって流れが少々異なるところです。
スムーズにサービスが利用できるよう、それぞれのサービス開始までの流れをみてみましょう。
3-1、介護予防訪問看護ステーションからサービスを受ける場合
①介護保険の対象となるか検討する
一見問題がなさそうな状態だと現状でも認定が出るのか不安になりますよね。
少しでも不安や困っていることがあるならば、まずは市区町村の窓口に申請に行きましょう。
申請後は市区町村の職員が訪問し聞き取り調査が行われ、並行してかかりつけ医からの心身の状態に関する意見書も作成されます。
調査結果と意見書をもとに、コンピュータによる一次判定、介護認定審査会による二次判定を経て介護度が決まりますよ。
②介護予防サービス計画書の作成
介護予防サービスを受けるには、介護予防サービス計画書の作成が必須です。
介護予防サービス計画書という名称はピンと来なくても、ケアプランという名称なら聞き覚えがあるのではないでしょうか。
要支援1、2の場合は地域包括支援センターへ相談し、作成してもらいます。
本人や家族の希望を聞き、心身の状態も考慮しながらどのようなサービスをどのように利用するのか計画を立てていきます。
③主治医に訪問看護指示書を発行してもらう
介護予防訪問看護について、介護保険法には主治の医師による指示を文章で受けなければならないと定められています。
主治医から指示を受けるために必要なのが訪問看護指示書です。
ケアプランに介護予防訪問看護についての記載があればすぐにサービスが利用できるというわけではないので注意しましょう。
④サービスを提供する事業所と契約
介護予防訪問看護ステーションと契約します。
ケアプランや訪問看護指示書をもとに、看護師や保健師が訪問看護計画書を作成します。
訪問看護計画書に問題がなければ、実際のサービスがスタートしますよ。
3-2、病院や診療所からサービスを受ける場合
要支援の認定を受け、地域包括支援センターにケアプランを作成してもらうところまでは訪問看護ステーションと流れは同じです。
その後、主治医が務めている病院や診療所と介護予防訪問看護のサービス契約を結ぶことになります。
大きな違いは主治医による訪問看護指示書が不要という点。
主治医が訪問看護指示書を出さなくても、直接訪問看護のスタッフに指示が出せるのです。
診療録に記載されている指示が訪問看護指示書の役割を果たしますよ。
ケアプランや診療録に記載されている指示をもとに、看護師や保健師が訪問看護計画書を作成し、サービスを提供する流れも訪問看護ステーションの場合と同じです。
4、介護予防訪問看護を利用するメリット
最後に、介護予防訪問看護のサービスを利用するメリットを2点紹介します。
①24時間365日専門家に相談したりアドバイスを受けたりできる
緊急事態が起こるのは病院が開いている平日の昼間だけとは限りません。
介護予防訪問看護は土日や祝日も関係なく、早朝や深夜も対応してくれます。
特に年末年始やお盆など、病院が長期間開いていないときはありがたいですよね。
利用料が割増しになってしまうのは痛手ですが、緊急時にも対応してもらえる安心感はとても大きいです。
②通院や通所をしなくてもいい
要支援の方の中には、自分はまだ健康なのに病院や施設へ行くのは嫌だと拒む方も。
こうなると本人に必要なサービスが提供できませんし、家族も困り果ててしまいます。
介護予防訪問看護は看護師や理学療法士などの専門家が自宅に来てくれるので、本人の病院や施設には行きたくないという思いも尊重しつつサービスを受けられますよ。
5、まとめ
たとえ外出や買い物が一人では難しくても、住み慣れた家で元気に過ごしたい。
誰もが望む当たり前のことですが、本人と家族の力だけでは簡単に実現するのは難しいことも多いですよね。
少しでも不安があれば、市区町村の窓口や地域包括支援センターに相談してください。
介護予防訪問看護を含め、様々なサービスを紹介してくれますよ。
実際に介護予防訪問看護を利用することになったら、スタッフに遠慮せず悩みを相談し、アドバイスをもらってください。
皆さんの望む生活を力強く支えてくれることでしょう。