「寝言がうるさい」「寝ているのに急に怒鳴りつけられて怖かった」など、寝言で気まずい思いをしたことがありますか?
寝言は自分では自覚がないので、指摘されて恥ずかしい思いをする人が多いようです。笑い話で住むような寝言であればそれほど心配する必要はありませんが、人が変わったように乱暴な口調での寝言や、助けを求めるような寝言を指摘された場合は、深刻な病が隠れている可能性があります。
ここでは、寝言の原因と病気との関係、寝言を改善する対策について解説します。
寝言はどんな時に出る?
寝言は「睡眠時随伴症(すいみんじずいはんしょう)」の症状の一つです。寝言のほかにも歯ぎしりや夜尿症、夢遊病(睡眠時遊行症)などが知られています。
睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があります。体が休んでいても脳が活動している状態がレム睡眠です。この時に出る寝言は夢に反応して出る寝言が多くなります。
脳も体も休んでいるノンレム睡眠時に出る寝言は、日常生活で経験したことに関係したものが多いようです。
人間以外の動物も寝言は出る
犬や猫を飼っている人は経験があるかもしれませんが、人間以外の動物も寝ている最中に唸り声をあげたり、時には手足をバタバタさせて何かを追いかけているような動きを見せたりします。
特に犬はレム睡眠とノンレム睡眠があることがわかっています。たくさん走り回って疲れた日や、外で初めてほかの犬に遭遇したなど、刺激が多い日は寝言が出たり、手足や耳をさかんに動かしたりします。
寝言を発する原因とは?
寝言の原因は人それぞれです。まだ解明されていないことも多くありますが、以下の項目に当てはまる場合は寝言が多くなる傾向があります。
- ストレスの多い生活をしている
- 常に疲労感を感じている
- 過度な飲酒、カフェインを摂取している
寝言は見ている夢に反応して出ていることもあれば、昼間に経験したことがもとになって出ている場合もあります。普段はとても穏やかな人なのに、寝ている間に怒鳴ったり、聞いたこともないような暴言を吐いたりして、家族をびっくりさせることもしばしばです。
普段、不満をはっきり口に出できずに強いストレスや不安を感じている人は、自分でも気づかない間にため込んだ怒りや不満が寝言に出てきやすくなっていると考えられます。寝ている間は理性が働かなくなるので、普段は絶対口にしないような暴言が出たり、乱暴な口調になったりしてしまうのです。
また、寝酒やカフェインの摂りすぎで睡眠が浅くなると、寝言が多くなることもあります。他に遺伝的要素も影響しているという説もあります。
ただ、本人は目が覚めた時は自分がそんな寝言を言ったことは覚えていません。家族に指摘されてもキョトンとしているだけ、ということがほとんどです。
このような寝言は、たいして心配する必要はありません。ただ、あまりにもひどくうなされている、苦しそうだとわかるようであれば、起こして夢から解放してあげたほうがいいでしょう。
子どもと大人の寝言の違いとは?
寝言は大人だけでなく子どもにもよく見られますが、子どもの寝言の原因は大人とは少し違っています。
睡眠は最初からレム睡眠とノンレム睡眠に分かれているわけではありません。赤ちゃんのうちは、夜昼の区別なく短時間の眠りと覚醒を繰り返しています。成長するにつれ、夜の睡眠時間が長くなり、1歳くらいになると日中の睡眠は昼寝1回程度になります。3歳くらいからは昼寝も必要なくなり、睡眠の大半が夜に集中します。
睡眠が夜に集中するようになると、体を動かさないように筋肉の動きがセーブされます。しかし、子どもはこの機能が未発達なため、夢を見るとさかんにしゃべったり、手足を大きく動かしたりすることが多くなります。
実際、一見寝ているようでも脳波を調べてみると覚醒状態であることも珍しくないようです。
子どもに特有の夜驚症
子どもは眠っていると思ったら、急に起き上がって泣きだすことがあります。若干の差はありますが、入眠後1~2時間後くらいが一番多いと言われています。しばらくは泣きわめいて、どんなになだめても落ち着きませんが、10分もすると、それまでの騒がしさが嘘のようにまた眠りについてしまいます。
これは夜驚症という症状で、朝目が覚めると本人は何も覚えていないことがほとんどです。
夜驚症の原因とは?
夜驚症は脳の機能が発達しきれていないことが原因と考えられています。また、怖い内容のテレビや絵本が恐怖心や興奮を引き起こし、夜驚症の原因になることもあります。
夜驚症への対処法は?
夜驚症は成長するにつれ、自然に治まりますが、子どもが怖がっている様子は親の立場からすれば、やはり不安です。
夜驚症は、下記の方法で改善できる可能性があります。
- 寝るまでのルーティンを習慣化
- 寝る前に刺激や恐怖心を与えない
- 泣き叫んでも無理に起こさない
寝るまでのルーティンを習慣化
ある程度成長するまでは、夕食から入浴、就寝までの流れを毎日一定にすることで落ち着いて眠れることが多くなります。就寝までの流れを意識して過ごさせると、夜中に寝言を言う、手足をバタバタさせるといったことは少なくなるようです。
寝る前の遊びは絵を描く、絵本を読む、ブロックを組み立てるなど、体をあまり動かさずに穏やかに遊べるものを選ぶと入眠しやすくなります。
寝る前に刺激や恐怖心を与えない
また、子どもが寝ないからといって「寝ないとオバケが出るよ」などと言って脅して寝かしつけようとするのは逆効果です。恐怖心で寝言や夜泣きがひどくなってしまうことがあります。
また、寝る直前までテレビを見たりして、強い刺激を与えると寝つきが悪くなることもあるので要注意です。
泣き叫んでも無理に起こさない
夜驚症は成長するにつれ、自然に治まることがほとんどです。心配になりますが、無理に起こすと睡眠のリズムを崩してしまうこともあります。ほとんどの場合、数分でまた眠りに入ります。寝言に過剰反応しないで、見守ることも大事です。
大半の寝言は心配ないが…
言った後は穏やかに寝ている程度の寝言はそれほど心配ありません。しかし、あまりにも寝言を言う回数が多い、乱暴な言葉遣いや怒鳴り声がひどいといった場合は、かなり強いストレスを受けている可能性があります。
ひどい寝言で家族に迷惑をかけている場合は専門医に相談してみましょう。
寝言に隠されている病気とは?
寝言の大半はそれほど心配することはありませんが、中には治療が必要な病が隠れていることもあります。
レム睡眠行動障害
レム睡眠行動障害は睡眠中に大声で寝言を言ったり、大きく手足を動かしたりするのが特徴です。
普段穏やかな人が夜中にいきなり大声で叫んだり乱暴な言葉づかいで怒鳴ったりします。壁を殴ったり、隣で寝ている人を蹴ったりすることもありますが、当人はまったく自覚がありません。
中年以上の男性に多い症状です。大きな声での寝言や、手足を大きく動かすような症状が頻繁にみられる場合は、レビー小体型認知症の初期段階の疑いがあります。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、日本人に多い認知症のひとつです。初期段階は便秘や嗅覚の異常といった症状から始まります。症状が進むにつれ、頭が冴えているときと、理解力や判断力などの認知機能が極端に落ちるときの差が現れ始めます。
また、手足の震えが止まらない、動作が鈍くなる、表情が乏しくなるといったパーキンソン症状も多くみられます。
高齢になると発症しやすくなりますが、40代で発症することもあります。症状が進むとコミュニケーションが取りにくくなるばかりでなく、介護者なしでは生活できなくなるため、家族に負担がかかってきます。周囲の人に寝言が多いと指摘されたら、早めに睡眠障害の専門医に相談して診断を仰ぐようにしましょう。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
過去に大きなストレスを感じる体験をすると、PTSDを発症することがあります。PTSDが原因で悪夢にうなされている人は、寝言が多くなる可能性があります。
PTSDを発症している人の寝言は助けを求めたり、恐怖や不安におののくような声を上げたりすることが多いようです。毎晩のように悪夢にうなされているようであれば、PTSDの症状かもしれません。こちらも早めに専門医の診察を受けるのがおすすめです。
寝言を改善する3つの対処法
寝言は本人には自覚がないものの、突拍子もないことをしゃべりだして恥ずかしい思いをしたり、周囲の人の睡眠を阻害するなどの迷惑をかけたりします。頻繁に寝言を指摘されている場合は、以下の方法で寝言を減らせる可能性があります。
- 質の良い睡眠をとる
- ストレスを減らす
- 生活習慣を整える
質の良い睡眠をとる
眠りが浅かったり、睡眠のリズムが乱れたりすると寝言が出やすくなります。質の良い睡眠をとれる環境を作る工夫をしてみましょう。部屋の温度や湿度を、自分が快適だと思えるように調整する、寝具が自分に合っているかなどを見直しましょう。
また、寝る直前の飲食、スマホやPCの閲覧も安眠の妨げになります。飲食やスマホは寝る1時間前までには済ませておくのが理想です。入浴は40℃程度のぬるめのお湯にゆっくりつかるとリラックス効果で入眠しやすくなります。
ストレスを減らす
常にストレスを感じていると、睡眠のリズムが乱れたり、悪夢を見ることが多くなったりすることで寝言が多くなる可能性があります。
昼間、ウォーキングや軽いランニング、サイクリングなどの有酸素運動はストレス解消の効果があります。仕事の合間に疲れを感じたら、気分転換もかねて軽いストレッチなどを取り入れましょう。
リラックス効果のあるアロマを焚く方法もあります。安眠につながるのは、ラベンダー、ネロリ、柑橘系の香りです。自分の好みのものを探してみましょう。
生活習慣を整える
睡眠時間が不規則だったり、極端に短かったりすると質の良い睡眠がとれません。眠りが浅かったり、睡眠のリズムが乱れたりすると寝言が出やすくなります。就寝時間、起床時間はなるべく固定して、規則正しい生活をするようにしましょう。休日だからといって1日中寝床の中で過ごすと、睡眠のリズムがみだれたり、眠りが浅くなったりして寝言を増やす原因になります。
また、朝食を摂らない、揚げ物やインスタント食品中心で栄養のバランスを欠いた食事も睡眠の質を下げます。3食事規則正しくとり、栄養のバランスのとれた食事を心がけましょう。
睡眠アプリで寝言を把握
最近は睡眠の質の向上を目指す睡眠アプリが多く出回っています。睡眠のサイクルを波形で記録するものもあれば、いびきや寝言を録音する機能がついているものなど、様々なタイプがあります。
睡眠アプリは、寝言も録音が可能です。睡眠時、自分がいつ、どのような寝言を言っているかを把握することで、寝言改善のヒントが得られる可能性があります。
ただ、睡眠の質を改善しようと張り切りすぎると興奮して眠りが浅くなるので、睡眠不足がひどくなってしまいます。
睡眠アプリは睡眠の質を改善するきっかけやヒントを得るのが主な目的です。アプリで取ったデータをもとに治療することはできません。あまり深刻にならず、無理のない範囲での使用にとどめることが大事です。根本的な改善は、睡眠外来などで相談しましょう。
まとめ
寝言は睡眠時随伴症のひとつです。大部分の寝言は生活習慣を見直すことで改善されることも多く、それほど心配することはありませんが、人が変わったように怒鳴ったり、動きが激しかったりする場合は、睡眠障害やレビー小体型認知症など治療が必要な病が隠れていることもあります。
周囲の人に指摘を受けたら、早めに専門医の診察を受けて症状を改善しましょう。