ホスピスという言葉を聞いたことがありますでしょうか?
聞いたことがある人でも、どのような場合にホスピスが利用できるか、どのくらいの費用がかかるのかといったことはご存じないのではないでしょうか。
この記事では、近年のホスピスの情報について整理し、気になる費用についても詳しく解説します。
ホスピスとは
ホスピスとは、緩和ケアをサービス提供する施設をさします。日本でのホスピスの始まりは、40年ほど前に、キリスト教を背景に持つ病院が、設置したことがきっかけです。
ホスピスには、病院の中で独立した建物にホスピスがある場合や、病棟の一部がホスピスとなっている場合もあります。
また、近年では施設ホスピスではなく、在宅ホスピスを選ぶこともできます。
在宅ホスピスとは、住み慣れた地域の在宅医療のサービスをうけながら、自分の家で緩和ケアを受け過ごすことをいいます。
ホスピスケアとは
ホスピスケアとは、緩和ケアと同義的に用いられます。WHO(世界保健機関)は、2002年に緩和ケアについて以下の定義をしています。
「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理的スピリチュアルな問題を早期に検出し的確に評価を行ない対応することで、苦痛を予防し和らげることをとうして向上させるアプローチである」とされています。
https://www.hpcj.org/what/definition.html
ホスピスの施設基準
ホスピス病棟には、「主として苦痛の緩和を必要とする悪性腫瘍の患者または後天性免疫不全症候群(エイズの患者)」の患者さんが利用できます。悪性腫瘍とは、癌のことです。
ホスピス病棟は、抗がん剤などの積極的治療を行わない患者さんが苦痛の緩和を目的に入院します。
近年では、末期心不全の患者さんの受け入れも、一部のホスピスで行われています。
https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_1_2_2/a226-2.html
ホスピス病棟として指定をうけるためには厚生労働省が定めた基準をクリアする必要があります。病棟が指定の看護師人員を守り、緩和ケアに関する研修をうけた医師が籍をおいて勤務している必要があります。
そのほか、施設面の基準もクリアしなければなりません。その上で、届け出をすることでホスピス病棟と指定されます。
この指定をうけていれば、費用は一定になります。
なかには、届け出をしていなくてもホスピスとしてのサービスを提供している場合もあります。この場合、届け出をしている施設とは、費用の負担額が異なることに注意が必要です。
ホスピスの費用
ホスピスの費用で、主なものは以下になります。
- 入院費
- 食費
- 室料差額
- その他の費用
入院費
ホスピスの入院費は診療報酬改定により、入院日数に応じた漸減性がとられています。
入院の日数 | 30日まで | 60日まで | 61日以上 |
入院費/日 | 51,070円 | 45,540円 | 33,500円 |
1割負担 | 5,107円 | 4,554円 | 3,350円 |
3割負担 | 15,321円 | 13,662円 | 10,050円 |
食費
食費は、健康保険の対象になり、届け出をして指定をうけているホスピスでは費用は一定になります。
その費用は、1食460円です。住民税非課税世帯などでは、費用の減免があります。
なので、1ヶ月が31日として、食費を合計すると約43,000円になります。
指定をうけていないホスピスでは、施設ごとに食費が異なります。
室料差額
ホスピスとして届け出をしている施設でも室料差額については、施設ごとに費用が大きく異なります。4人部屋などでもベッド代として室料差額の費用がかかる場合もあります。
高級施設では、1日あたり10万円といった室料差額になることもあります。
その他の費用
洗濯をするためのコインランドリーの費用や、衣類リースした場合の費用も必要です。また、おむつ代などの消耗品費も必要です。
ホスピスに家族が面会する際、交通費がかかります。この交通費負担が、毎日のことになる場合のことも考える必要があります。
また、面会に来てくれた家族の食費といった部分も見えにくい費用として考えられます。
介護施設での費用
近年、ホスピスケアを行える介護施設がふえています。具体的には、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、看護小規模多機能型居宅介護などがあります。
それぞれのサービスを利用した際の費用について、整理します。
有料老人ホーム
有料老人ホームでも、施設によっては、ホスピスケアをうけることができます。入居希望をされているホームがホスピスケアを行えるのか、確認が必要です。
有料老人ホームではレクリエーションなどの活動が充実している施設もあり、病気があっても日々の生活の彩りになる活動を続けたい方にはよいでしょう。
有料老人ホームにおける費用
- 入居一時金
- 介護サービス利用料
- 自費サービス費
- 賃料
- 管理費
- 食費
- 診療費、薬代
- 消耗品費
入居一時金
有料老人ホームの多くは、入居一時金を設定しています。入居一時金は数万円から数千万円と幅があります。多くが前払いで、 償却期間をすぎるまえに退去する場合には未償却分について払い戻されます。
介護サービス利用料
必要に応じて、訪問介護や訪問看護を利用する場合にかかる費用です。介護の必要度や介護保険の負担割合によって費用が異なります。
介護保険で定められた、介護度による自己負担限度額は以下になります。
介護度 | 自己負担限度額(1割り負担の場合) |
要介護1 | 16,765円 |
要介護2 | 19,705円 |
要介護3 | 27,048円 |
要介護4 | 30,938円 |
要介護5 | 36,217円 |
自費サービス費
有料老人ホームでは、有料の自費介護サービスやレクリエーション活動がある場合があります。医療や介護保険サービスと合計すると、5万円から25万円くらいかかります。
賃料
有料老人ホームの賃料は、1ヶ月あたり15万円から30万円が相場です。この中に水道光熱費が含まれる場合があります。
管理費、食費、消耗品費
施設の維持管理費や水道光熱費、事務手数料が含まれます。各施設により費用が異なります。
有料老人ホームの食費も、施設により差があります。
消耗品費は、管理費などに含まれる場合があります。施設により異なりますので確認が必要です。
診察費、薬代
状態に応じて、診察や薬の費用がかかります。この費用は患者さんの状態により一定ではありません。
サービス付き高齢者向け住宅、ホスピス住宅の費用
ホスピス住宅とは
近年かなり増えているのが、サービス付き高齢者向け住宅、およびホスピス住宅です。
ホスピス住宅のなかには、病院並みに看護師を配置している施設もあります。
サービス付き高齢者向け住宅、ホスピス住宅の費用
サービス付き高齢者向け住宅およびホスピス住宅での費用の内訳は以下になります。
有料老人ホームの場合と異なる点について解説します。
- 入居一時金
- 介護サービス利用料
- 賃料
- 管理費
- 食費
- 診療費
- 薬代
- その他(おむつなどの消耗品、コインランドリー費、衣類リース費など)
入居一時金
サービス付き高齢者向け住宅のなかには、入居一時金を支払う必要のある施設もあります。ご検討の施設が入居金を設定しているか、確認する必要があります。
介護サービス利用料
介護保険サービス利用料については、有料老人ホームと異なるのは、自費介護サービスが少ない点です。
基本的に、介護保険サービスと医療保険サービスを併用して療養することになります。
賃料
住宅に入居する際に月ごとに発生する賃料は、施設のある地域の物件賃料に準じます。費用は、5万円から30万円です。
賃料が抑えられている施設では、別途で管理費の費用負担がある場合があります。
管理費
管理費には、水道光熱費、事務費用などが含まれます。管理費が賃料に含まれている場合がありますが、1万円から5万円が相場です。
食費
食費は施設により費用が異なります。おおよそ、一日あたり1,000円から1,500円が相場です。1か月が31日として、3万円から5万円程度になります。
看護小規模多機能型居宅介護での費用
看護小規模多機能型居宅介護とは、住み慣れた地域で暮らし続けるために、医療と介護の両方をサービス提供する地域密着型介護事業所です。
泊り、訪問、通所のすべてを1つの事業所で行います。
看護小規模多機能型居宅介護でホスピスケアをうけることは、施設ホスピスと在宅ホスピスの中間の施設ととらえられます。
看護小規模多機能型居宅介護で、ホスピスケアを受ける場合にかかる費用には以下のものがあります。
- 看護小規模多機能型居宅介護の介護保険料
- 食費
- 泊りを利用したときの宿泊費
- 往診などの診療費、薬代
- その他の費用(おむつ代、衛生用品などの日用品)
看護小規模多機能型居宅介護の介護保険料
看護小規模多機能型居宅介護は、介護保険サービスです。介護度と負担割合により、費用が異なります。
下記の1割負担金を2倍にした費用が、2割負担の場合の費用になります。
介護度 | 介護度別利用者負担金負担金(1割負担) |
要介護1 | 13,493円 |
要介護2 | 18,879円 |
要介護3 | 26,539円 |
要介護4 | 30,100円 |
要介護5 | 34,047円 |
この費用は看護小規模多機能型居宅介護の月額の利用料です。
看護小規模多機能型居宅介護でホスピスケアを受けるために泊りを多くすると、宿泊費と食費が別途かかります。
泊りを利用したときの宿泊費
介護保険におけるショートステイの費用と同様に宿泊費がかかります。
費用の相場は、1泊当たり5,000円から7,000円になります。宿泊を利用した分だけこの費用がかかると考えます。
在宅ホスピスの費用
在宅ホスピスとは、自宅にいながら、ホスピスケアを受けることです。
ベッドレンタルなどは、介護保険で利用することができます。病状により、医療や介護サービスを利用できます。
在宅ホスピスは、施設ホスピスに比べて、費用が少ない傾向にあります。
在宅ホスピスにかかる費用の内訳は以下になります。
- 医療費や薬代
- 訪問看護費用
- 薬剤師訪問サービス費
医療費や薬代
診察費や処方薬についての費用です。処置などで必要になる衛生用品などの費用も含みます。
外来通院でなく、訪問診療という在宅医療制度を利用することもできます。
お看取りの診療をしていただく場合、7,000円以上の費用がかかります。訪問診療を行った回数などで料金が変動します。
訪問看護費用
訪問看護は介護保険サービスでも利用できます。患者さんの状態により、医療保険での訪問看護が適応になります。
医療保険で訪問看護を行う場合、医師の指示により行われます。
医療保険の訪問看護の費用は1割負担の場合、30分未満で470円、30分以上60分未満で821円、60分以上1時間半未満の場合で1,125円になります。
薬剤師訪問サービス費
体調が悪くて薬局へ行けない場合、介護をしているご家族が多忙で薬局へ行くことができない場合に薬剤師訪問サービスを利用することができます。
費用は、訪問薬局の事業所と利用する方のお住まいの場所でも異なります。介護保険で1割負担の方で300円から650円の費用負担があります。
このほかに、薬代の費用が必要です。
ホスピスの費用負担を抑える公的制度の利用
ホスピスなどで療養すると、医療費は高額医療や医療費控除の対象になります。
そのほかにも、利用できる制度について整理します。
高額療養費制度
ホスピスや薬局などをふくむ医療機関の会計で支払った額が一定以上の場合に利用できます。収入に応じて、限度額がきまり、支払った医療費の一部が還付されます。
限度額適用認定証
支払うことになる医療費が限度額をこえることが事前にわかっていれば「限度額適用認定証」を交付してもらうことで、一時的な支払いや払い戻しの手続きをせずにすみます。
加入している保険組合で手続きができます。
高額医療・高額介護合算療養費制度
医療保険と介護保険の支払金額に応じて、基準額以上の費用負担があった場合に還付がうけられる制度です。
世帯で同じ医療保険の加入者であることや収入により限度額が設定されています。
医療費控除
介護保険で利用した訪問看護や診療で支払った費用は、医療費控除の対象になります。確定申告をすることで、所得税の節税ができます。
まとめ
これまで、ホスピスにかかる費用について、ほかの施設やサービスと比較して、くわしく解説しました。
ホスピスは人生の最終段階をすごす場所です。そういった段階で大切になるのは、自分自身、または大切な家族がどのような時間を過ごしたいのかということです。
日々の生活で、このようなことを考えている方は、少ないのではないでしょうか。
ご家族の中での中で、ご自身の意見を含めて、よく話すことがまず大切といえます。そして、人生の最終段階を託す場所について考え、施設の見学や問い合わせをすることも良いことです。