仕事やプライベートが忙しい日々が続くと、睡眠時間が確保できなかったり、寝ても疲労感が取れないと悩みがちな方も多いのではないでしょうか。
単なる睡眠不足だと思って放っておくと、心身にさまざまな悪影響が及ぶ可能性があります。今回はそんな睡眠不足に悩んでいる人に向けて、解消が期待できる方法5選を紹介。日常の中で実践しやすいものを揃えましたので、今回の記事を参考に生活に取り入れてみてください。
睡眠不足を解消する5つの方法
睡眠不足を解消するための方法は、日々のちょっとした心がけでできることがたくさんあります。ここでは寝不足の解消を目指せる方法を5つ紹介。ご自身の生活スタイルと照らし合わせて、取り入れやすいものから実践してみてください。
適切な睡眠時間を知る
睡眠時間の理想は7〜8時間と言われていますが、実際には個人差があり、長い時間が適している人もいれば、短くても十分な人もいます。なので、自分はどれくらいが適切な睡眠時間なのかを知ることが、睡眠不足解消の第一歩といえます。適切な睡眠時間の目安は、日中に眠気に襲われず、生活に支障が出なければOK。まずは6.5時間程度から始め、1週間ごとに精神面、体力面をチェックしながら少しずつ調節していきましょう。
日中15分程度の仮眠をとる
時間と場所に余裕があれば、13時〜16時の間で15分程度の短い仮眠は積極的に取り入れましょう。ただし、あまり長すぎると深い眠りになってしまい、目覚めた後も眠気が取れない場合があります。
理想は15分〜30分程度と言われ、このタイミングで起きれば睡眠のリズムで言う「ノンレム睡眠」に当たる段階なので、深い眠りに落ちる前の浅い眠りで起きることができ、すっきりした状態で起きられます。
入眠儀式を取り入れる
入眠までの行動を習慣化することで、入眠へのスイッチとなり眠りやすくなります。
これは「入眠儀式」といい、育児の分野で出てくる考え方ですが、睡眠不足に悩む大人にも当てはまります。その行動をすることでリラックスできる、と身体に覚えさせることで、まるでスイッチが入ったかのように眠気が襲い、スムーズな入眠が実現できます。おすすめはお風呂にゆっくり入ったり、ハーブティーを飲んだりなど、副交感神経が優位になるような行動です。自分が一番リラックスできる行動習慣を探してみてください。
起床時間を揃える
睡眠時間の確保ももちろん大事ですが、毎日の起床時間をそろえることもとても大切です。人間は起きる時間に向けて「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。
この分泌時間が揃うことで目覚めがスッキリすると言われています。なかなか平日は睡眠時間が確保できず、休日は遅い時間に起きる、という方も多いのでは。少しずつでも良いので平日と同じ時間に起きられるように調整し、もし寝坊しても30分以内に収めるようにしましょう。リズムを一定にすることで無理なく起床、入眠できるだけでなく深い眠りに入ることができます。
質の高い睡眠を心がける
睡眠時間の長さだけでなく、睡眠の”質”にこだわることも大切です。たとえ睡眠時間を長く取れたとしても、睡眠自体の質が悪ければ睡眠不足につながります。また、どうしても睡眠時間が確保できない人にもこの考え方はとても有効です。睡眠の質を高める方法はいくつかありますので、自分ができる範囲で実践してみましょう。
睡眠環境を整える
睡眠環境を見直すことは、睡眠の質向上に大きな役割を果たします。人間の体は深部体温が下がるタイミングで眠気が出てくるため、室温と湿度が適していないと睡眠の質が下がります。エアコン等で睡眠中もまた室温と湿度を意識してみましょう。
締め付けのないゆったりめのパジャマや、温度と湿度を快適に保つシーツを使うのも効果的です。
また、アロマを活用することもおすすめです。香りは脳の本能的な感情や記憶を支配する大脳辺縁系という部分にダイレクトに伝わります。眠る時に決まった香りを嗅ぐ習慣をつけることで、瞬間的にリラックスできるようになります。また、自律神経を整える効果も期待できるので、より身体をリラックスモードへ導いています。安眠にはラベンダー、ベルガモットなどがおすすめです。お気に入りの香りを見つけてよりお部屋をリラックスできる空間にしてみましょう。
寝る直前の行動を整える
うまく眠りにつけないという方は、寝る前の行動を見直してみましょう。一般的に寝る直前に食事を取ると胃腸が活発に動いたまま眠りに着くことになるので、身体がうまく休まらず熟睡できません。胃腸の働きが落ち着くのは、食事をしてから3時間程度と言われているので、入眠時間から逆算して食事の時間を調整してみましょう。
また、紅茶やコーヒーを飲む時間も意識したいポイントです。カフェインの効果は5〜7時間とかなり長く続くため、昼食後のコーヒーも睡眠の質に支障をきたしている場合があります。眠りに悩みがある人は、コーヒーの代わりにハーブティーを飲むなど工夫してみましょう。
適度に運動する
日中に適度な運動を取り入れることも、睡眠の質向上につながります。睡眠のリズムは眠りたいという「睡眠欲求」と目覚めるための「覚醒力」のバランスで成り立っています。これは日中の活動量が大きく影響していて、適切な運動で身体が疲れることで眠りたい欲求を満たすことができます。近頃はおうちで過ごす時間も増えているので、身体を動かす機会も減少している人も多いのでは。もし眠れずに困っている人は、ウォーキングなどの有酸素運動を取り入れてみてください。
ただ、運動のタイミングは注意が必要です。あまり寝る直前に激しい運動をすると交感神経が優位になるため、睡眠の質に影響が出てしまいます。
睡眠不足とは
そもそも寝不足とは、その人にとって必要な睡眠が十分に取れていない状態を言います。人によって睡眠時間はさまざまなので、都度日中に活発に活動でき、眠気に襲われないか?を確かめていく必要があります。
また時間だけでなく睡眠の質が悪いと、睡眠不足に陥る可能性があります。長い時間睡眠をとっても疲れが取れない場合は、睡眠の質が悪いために睡眠不足になっていると疑った方が良いでしょう。
睡眠不足が続くと「睡眠負債」に
睡眠不足が続く状態を「睡眠負債」と呼ぶことがあります。これは睡眠研究のメッカである、スタンフォード大学の睡眠研究所創設者ウィリアム・C・デメント氏が提唱した言葉です。慢性的に睡眠不足が続くと簡単に解消できないことを借金の返済にたとえて提唱されました。
仕事が忙しいと、休日に寝溜めをしようと朝遅くに起きる方も多いのではないでしょうか。しかしこの睡眠負債は借金と同じで貯めれば貯めるほど一気に返済することが難しく、休日の一時的な睡眠時間補填では返済しきれない場合が多いです。
また、睡眠はお金と違って貯めることができないので、睡眠不足は都度返済していかなくてはいけません。厄介なことに睡眠負債が積み重なっても本人に自覚がないことが多く、気づかないうちに心身に影響が出てしまう、ということも少なくありません。
放っておくと怖い!睡眠不足のリスク
睡眠不足が続くとどのような体調の変化が現れるのでしょうか。ここでは代表的な寝不足のリスクを紹介していきます。
脳の疲労がとれない
身体と同じように脳にもリンパ液が通っていることが明らかになっており、このリンパ液を使って、睡眠中に脳の老廃物を洗い流す作業をしています。なので、睡眠不足が続くことは、脳の中に老廃物をどんどん溜め込んでいくことと同じことと言えます。睡眠不足が続くと集中力や判断力、記憶力が低下し、日中のあらゆる行動に影響が出てきます。
身体の疲れが取れない
寝不足は身体の疲労感とも深く影響しています。日中受けたストレスなどで増える活性酸素という物質は、通常だと睡眠によって処理をし、傷ついた細胞を修復します。しかし睡眠が不十分だとうまく活性酸素を処理しきれず、疲労がいつまでも身体に残ることになります。睡眠の世界では、1回の徹夜より、2時間の睡眠不足が続く方が身体に悪影響が出ると言われています。
精神的に不安定になる
睡眠不足の状態だとストレスへの耐性も低くなっているので、精神的に不安定になることもあります。ある実験では、4時間程度の睡眠が5日間続くと、うつ病のリスクが高まることがわかっています。寝不足だと、不安や怒りといったマイナス感情のスイッチとも言われる扁桃体が興奮しやすくなると言われているので、日中気分が落ち込みやすくなったり、イライラしやすくなります。睡眠は脳・身体だけでなく心の回復時間でもありますので、精神を乱さないための予防策として、睡眠を見直してみましょう。
体臭が臭うようになる
寝不足が続くと皮脂分泌が活発になります。皮脂は時間が経つと皮膚表面にある雑菌と合わさって不快な臭いを放つガスを発生させ、これが体臭が臭う原因になります。
また、悪臭の原因となる乳酸やアンモニアが体内から高濃度で汗とともに排出されるようになり、これも体臭がキツくなる原因となります。以前より体臭がキツくなったと感じる人は早めの対策をすることで臭いが抑えられるかもしれません。
生活習慣病・肥満になりやすい
生活習慣病4大要因の一つに睡眠が挙げられるほど、睡眠と生活習慣病には大きな関係があります。
寝不足の人は交感神経が優位になり緊張状態が長く続くため、血圧が高い状態も長くなります。そのため高血圧になりやすいと言われています。また、インスリンと呼ばれる、血糖値をコントロールするホルモンの働きも鈍くなるため、糖尿病のリスクが高まります。
また、食欲を刺激する「グレリン」というホルモンの分泌が多くなるため、食欲旺盛になりつい食べ過ぎてしまう傾向も。これにより寝不足の人は肥満になりやすいと言われています。
糖尿病、高血圧、肥満は動脈硬化につながる危険な状態です。心疾患や脳血管の疾患にもつながるリスクがあります。
寝不足のサイン
睡眠不足はさまざまなリスクがあるにもかかわらず、本人に自覚がないことが多いため、日頃から寝不足かどうかしっかり確認していかなければなりません。そのためには、日頃何気ない行動にも寝不足のサインが潜んでいないか意識していく必要があります。ここでは寝不足が疑われるサインを紹介していきます。
氷をガリガリ噛む
近頃よく氷をガリガリと噛むことがあるな、と思い当たる人は要注意。寝不足になるとセロトニンが低下し、気分が落ち込みやすいと言われています。このセロトニンは氷を噛むなどリズム運動によって分泌が促進されます。あなたの日々の何気ない習慣は、身体が無意識に気分の落ち込みを和らげようとしているのかもしれません。
甘いものを食べる量が増えた
甘いものをよく食べるようになる傾向も、睡眠不足のサインの一つです。寝不足になると満腹を感じるためのホルモンが減少するため、食欲が増進することがあり、そのためいつもより甘いものを欲するようになっている可能性があります。
机や部屋など、身の回りが散らかっている
寝不足の状態だと、前頭葉の働きが鈍ると言われています。前頭葉は周りのさまざまな情報を取り入れ、処理した上でどう行動することが適しているかを判断している場所です。部屋が散らかるということは、目の前にある状況をどうしたらよいかの判断が鈍っている可能性があります。
人やものによくぶつかる
寝不足になると注意力、判断力が下がるのと同時に、身体の動きを正しく予測する能力も低下します。歩いていて人にぶつかる、家の中で昔よりドアや机の角にぶつかりやすくなった、という方は要注意です。
忘れ物が多くなる
睡眠不足は脳の疲労が完全に取れていない場合が多いため、記憶力が落ちていることがあります。また注意力が散漫になったりするので、忘れ物が多くなることがあります。なにか考えていたのに行動しようとしたらその目的を忘れてしまった、といった場面が思い当たる人は「睡眠で脳の疲労を取りなさい」という脳からのサインかもしれません。
睡眠不足を解消して健康的な毎日を
いかがでしたでしょうか。
睡眠不足はそのまま放っておくとさまざまな面で悪影響が出てきます。また、少しずつ蓄積された「睡眠負債」は一度で解消することはできず、本人に自覚症状がないことが厄介です。今回紹介した解消法はちょっとした心がけで改善できることも多いので、少しずつ取り入れてみて睡眠不足改善を目指してくださいね。