最近、ウエスト周りが急にきつくなった。ダイエットしたいのに、甘いもののドカ食いがやめられない。最近、こんな悩みを抱えている方、自分の睡眠時間を一度計った方がいいかもしれません。
睡眠が5時間以下なら、あなたの肥満の原因は睡眠不足の可能性があります。
今回は睡眠不足と肥満の関係について解説します。睡眠不足を解消するための方法についても説明しますので、どうぞ最後までお付き合いください。
睡眠不足で肥満になる理由とは
「睡眠不足が続くと太りやすくなる」とはよくいわれますが、そのメカニズムの詳細を説明できる人は意外と少ないのではないでしょうか。
人の食欲には2種類のホルモンが関わっています。レプチンとグレリンです。レプチンは食欲を抑える働きを持つホルモンです。一方、グレリンは食欲を増大させる働きがあります。
睡眠と肥満に関する研究でわかったこと
米スタンフォード大学は2004年に睡眠時間と食欲に関する研究を行っています。その結果、睡眠を5時間しかとらなかった人は、8時間睡眠をとった人に比べて、食欲を増大させるホルモン「グレリン」の量が15%ほど多いことが判明しました。その一方で、食欲を抑えるホルモン「レプチン」は、15%少ないことも確認されています。
食欲にかかわるホルモンの分泌量が睡眠時間の長さに関係していることが明らかになりました。
睡眠時間を減らし、起きている時間が長くなると、体はグレリンを増やしてエネルギーを確保するために、何か食べるよう促します。一方で食欲を抑えるレプチンの分泌量は減少し、結果、食欲が増して食べるのをやめたくてもやめられなくなります。
また、米コロンビア大学で2005年に行われた研究でも、睡眠と肥満の関係について興味深い調査結果が出ています。コロンビア大学は、32歳~59歳の男女8,000人を対象に、睡眠時間と肥満率の調査を行いました。
その結果、平均7~9時間の睡眠をとっている人にくらべて、睡眠時間が平均4時間以下の人の肥満率が73%も高いことが判明しました。睡眠時間が5時間の場合でも肥満率が50%高いことも明らかになっています。
睡眠不足で陥る負のループ
睡眠不足は運動量にも影響を与えます。睡眠不足が続くと昼間でも眠気が止まらず、だるさを感じるので、動くのが面倒になりがちです。これは、突発的な危険が迫った時に体力を残しておくための本能からきています。
そのため昼間の活動量が減り、習慣的に行っていた運動も面倒に感じ、さぼるようになってしまいます。
一方で、睡眠不足の影響でグレリンが増大し、レプチンは減少しているので、食欲が止まりません。1日の運動量は少ないのに、食欲が抑えられない…。結果、運動量に比べて摂取カロリーが多すぎるので肥満につながるというわけです。
負のループはまだあります。昼間の活動や運動で消費できるカロリーは、1日の総カロリーの3割が限界です。残り7割のカロリーは「基礎代謝」で消費されます。
睡眠不足は基礎代謝を低下させる
基礎代謝とは、心臓や胃など内臓を動かしたり、呼吸や体温調整をしたりするときに消費されるカロリーです。自分で動かそうと思わなくても自然に動いている筋肉が運動することで消費されます。1日の総カロリーの7割を占めているのは基礎代謝です。
基礎代謝は個人差があり、摂取カロリーが同じでも、基礎代謝が良ければ消費カロリーが増え、太りにくくなります。逆に基礎代謝が悪いと消費カロリーが少なくなり、肥満の原因になります。
基礎代謝を左右する成長ホルモンとは
基礎代謝には「成長ホルモン」が必要です。成長ホルモンは睡眠中に分泌され、脂肪の分解と細胞の新陳代謝を促進させる役割を担っています。
成長ホルモンが分解する脂肪の量は1回約300kcalです。睡眠の質が悪いと分泌量が減り、体内に残される脂肪の量が多くなります。睡眠不足が続くと、体に余分な脂肪がどんどんたまって肥満に繋がります。
また、基礎代謝量は筋肉の強さに左右されますが、昼間疲弊した筋肉を修復するのも成長ホルモンの役目です。
睡眠時間を充分にとって、成長ホルモンが多く出ると筋肉が修復されて強くなり、基礎代謝が上がって太りにくい体になります。反対に睡眠時間が減ると、当然ながら成長ホルモンの量も減り、基礎代謝量が下がって太りやすくなります。
睡眠中に成長ホルモンが最も多く出るのは、就寝してから3時間の間です。この時間内に訪れる「ノンレム睡眠(脳も体も休んでいる状態)」時に、成長ホルモンの7~8割が分泌されます。
この3時間の睡眠が浅く、目を覚ましてしまうと成長ホルモンが充分に分泌されず、基礎代謝に悪影響が出ます。
睡眠不足で嗜好が変わる?
また、別の研究では睡眠時間が短いほど甘いお菓子や塩分の多いスナック菓子、パンやパスタなど炭水化物を好むようになるという結果が出ています。どれもダイエットの大敵といえる食品です。
こういったことから、睡眠不足は
- 睡眠時間が減ることで、食欲を増大させるグレリンが増え、食欲を抑えるレプチンが減少する
- 睡眠時間が減ることで、運動量が減る一方で食欲は増大しているのでカロリー過多になる
- 睡眠時間が減ることで、成長ホルモンの分泌が減り、基礎代謝が落ちて太りやすくなる
- 睡眠時間が減ることで、よけいな脂肪が体内にのこり肥満につながる
- 睡眠時間が減ることで、ジャンクフードが食べたくなる
という負のループを幾重にも作り出し、一度はまると簡単には抜け出せなくなってしまいます。
肥満を防ぐために必要な睡眠時間とは
睡眠時間が短く、質が悪いと肥満につながりやすいことはわかりましたが、肥満を防ぐために適正な睡眠時間はどれくらいなのでしょうか?
適正な睡眠時間は個人差があり、一概には言えません。しかし、これまでの研究結果から、7~8時間寝ている人に比べ、睡眠時間5時間以下の人の方が肥満傾向が多いのは明らかです。
ウィスコンシン大学が2004年に発表した論文では、7時間42分の睡眠時間が一番太りにくいとされています。このことから今の時点では、約7~8時間くらいの睡眠時間が肥満防止に最適ということのようです。
その一方で、寝すぎても太るという研究結果も散見されます。結局のところ、適正な睡眠時間は、個人個人で時間をかけて見つけ出していくのがベストのようです。
短すぎず、長すぎず、疲労感が残らず、甘いものやジャンクフードが食べたくならない睡眠時間を見つける必要があります。
眠りたいけど眠れない場合の対処法
必要な睡眠時間はわかったけれど、なかなか寝付けない。すぐ目が覚めてしまうなど、思うように眠れないという人は多いようです。夜、なかなか眠れない理由は大きくわけて3つあります。
- 肥満やアレルギー、持病などからくる身体的要因
- 長期間ストレスやプレッシャーにさらされているなどの心理的要因
- 通勤や家事のために睡眠時間が削られる、または騒音などで眠れないなどの環境的要因
今すぐに解消するには難しいものもありますが、現状でできることを少しずつ実行して、睡眠時間を増やしましょう。
規則正しい生活を送る
睡眠時間を増やすことも大事ですが、まずは起きる時間を一定にすることから始めましょう。朝、目が覚めたら一定の時間に太陽の光を浴びることで体内時計が整い、すっきりと起きることができるようになります。
休日だからと言って、昼間まで寝ていると睡眠のリズムが崩れて、質の高い睡眠がとれません。
朝食の時間も一定にします。朝のルーチンを確定することで、自然に目が覚めるようになります。朝、どうしても眠い場合は、朝食を食べた後、1時間ほど仮眠をとると眠気が解消されます。
昼寝もおすすめですが、午後3時までに済ませるようにしましょう。夕方近くなって寝てしまうと、やはり睡眠のリズムが狂って深い睡眠がとれなくなります。
食生活の改善
睡眠物質は、ブドウ糖やアミノ酸が原料となっています。亜鉛や鉄などのミネラル類、ビタミンB群も欠かせません。質の良い睡眠をとるためには、様々な栄養素をバランスよくとる必要があり、不足している栄養素は人それぞれ違います。
朝食を抜いたり、食事をジャンクフードで済ませたりすると、深い眠りが取れなくなり、肥満につながります。1日で食べたものを、日記やメモに残しておくと自分の食生活で足りないものがわかりやすくなり、食生活の改善になります。
また、寝る直前の飲食は厳禁です。就寝時に胃に食べ物が残っていると消化が優先され、安眠できなくなります。
寝酒はNG
寝酒はよく眠れたような感覚がありますが、残念ながら錯覚です。就寝直前の飲酒は眠りが浅くなり、目が覚めてしまうことがあります。また、アルコールには利尿作用があるので、尿意で目がさめてしまいます。
飲酒は、寝る2~3時間前にすませ、量もほどほどにしておきましょう。
コーヒーは午前中に
カフェインに覚醒作用があるのはよく知られています。コーヒーだけでなく、緑茶、ココア、などカフェインを含む飲み物は極力午前中に摂るようにしましょう。チョコレートなどお菓子にもカフェインを含むものがあるので、注意が必要です。
適度な運動を取り入れる
質の良い睡眠には、適度な疲労感が必要です。ウォーキングや軽いランニングなどを通勤や仕事の合間に取り入れてみましょう。寝る直前の激しい運動は逆に目が冴えてしまいます。寝る前の運動はヨガなど、ゆったりとできるものがおすすめです。
寝具を変える
マットレスなどが経年劣化で寝心地が悪いと感じるようであれば、買い替えを検討しましょう。高すぎたり低すぎたりする枕は、寝返りを打ちにくく、血行不良の原因となり、頭痛や肩こりを引き起こす原因となります。
寝る前のスマホは厳禁
寝る前に目に強い光を浴びると、脳が朝だと勘違いして、深い眠りにつくことができなくなります。スマホやPCの閲覧は寝る2~3時間前に終わらせましょう。
体重を減らす
肥満気味の人は、脂肪が気管周辺についているため、睡眠時に呼吸がしづらく、質の高い睡眠がとれていないことがあります。肥満体型で、熟睡間が得られない人は、ダイエットする必要があるかもしれません。
いびきがうるさいと指摘された場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性もありますので、一度呼吸器内科を受診してみましょう。
2分で安眠できる方法がある?
米海軍が採用しているという、2分で眠りにつくことができる方法があります。軍人が6週間訓練を受けて身に着けるものなので、すぐ実行できる方法ではありませんが、時間をかけて気長に取り組んでみましょう。
横になった状態がベストですが、慣れると座った状態でもできるようになります。
- ゆっくり深呼吸し、額やあご、目の周りの筋肉をほぐす。
- 肩をできるだけ低い位置まで下ろしてから、そのあと、片方の二の腕から手首までゆるめ、反対側の腕も同様に。
- 再び深呼吸して、ゆっくり息を吐きながら上半身をリラックスさせ、太ももからひざ下までの緊張をほぐす。
- 水の上に浮かんでいるなど、リラックスした状態を想像する。
- 全身を10秒間リラックスさせ、「考えるな、考えるな」と10秒間、唱え続ける。
ただ、1、5の部分は短時間で集中する必要があり、軍人の訓練を受けたことのない一般人には、少し難しいと言えます。
上記の説明だけは、わかりにくいので、動画を見ながら実践してみましょう。
また、「考えるな、考えるな」という部分は、ナレーション機能のあるスマホアプリを使用すると、いくらか実行しやすくなります。
まとめ
寝不足が続くと、食欲をコントロールするホルモンバランスが乱れたり、動くのが億劫になったりすることで、太りやすくなることがわかりました。
一度、睡眠不足の負のループに落ちてしまうと抜け出すのが大変です。太ってきていることがわかっているのに、運動するのが面倒に感じたり、ドカ食いが止められなかったりする場合は、睡眠時間を見直してみましょう。
肥満は生活習慣病の原因にもなり、人生の質を下げてしまいます。少しでも質の良い睡眠がとれるよう、改善していきましょう。