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利用権方式ってなに?よく選ばれる支払い方法についても解説

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ご家族の介護施設への入所を検討したことがある人なら、利用権方式という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?

利用権方式は賃料と介護などの周辺支援サービスが一体化された契約方法です。

支払い方法も数パターンに分かれており、どれが自分に1番向いているのかを考えることが大切になります。

本記事では利用権方式の基本的な説明から支払い方法まで幅広く解説してるので、ぜひ施設選びの参考にしてみてください。

この記事の監修者
睡眠健康指導士、建築物環境衛生管理技術者
佐々木崇志
東北大学大学院薬学研究科修了。修士(薬科学)、建築物環境衛生管理技術者。 修了後は臨床研修指定病院で医局秘書や学生担当として全国の医療を志す学生や医療従事者と携る。勤務していく中で睡眠に関する訴えが医療従事者にも多い事に気づき、自身も医療従事者や患者の助けにならないかと考えるようになり個人で活動を始める。現在は東北を活動の拠点として睡眠(体内時計・時計遺伝子)の研究の経験、資格の知識を生かしながら睡眠啓蒙活動を行なっている。

利用権方式とは

利用権方式とは

利用権方式とは有料老人ホームなどの介護施設を利用する際の契約形式のひとつで、厚労省の報告によると全国の介護付き有料老人ホームの約8割が利用権方式を採用しています。

家賃にあたる「居住部分」と食事や洗濯、入浴など「生活支援等のサービス部分」の契約が一体化しているのが特徴です。

後述する建物賃貸借方式が借家借地法の適用になるのに対して、利用権方式で契約の対象となるのは個人のみ。

そのため家族への相続権はなく、利用者の死亡により契約も解除となります。

利用権方式のメリット

利用権方式メリット

先述したように、多くの介護付き有料老人ホームは利用権方式です。

では、利用権方式にはどのようなメリットがあり、どのような人に向いているのでしょうか?

利用権方式のメリットは以下の3つです。

介護が必要な人におすすめ

利用権方式は居住する部屋の料金と身の回りの世話をしてもらう介護料金がセットになったものです。

そのため、はじめから施設自体に介護サービスが付帯されており、介護が必要な人も安心して利用できます。

また、有料老人ホームは日常生活が自立している人から要介護状態の人まで対象が幅広いので、今後を見越して日常生活にそこまで介助がいらないうちに入所しているケースも少なくありません。

外部の介護サービスとの併用も可能なので、入所する施設が提供してくれるサービスを確認して自身にあったものを選択しましょう。

全ての費用を把握しやすい

利用権方式の形式をとっている施設であれば、支払額に入居する部屋の賃料や管理費、食費、介護費などが全て含まれています。

全体の必要な金額を把握しやすくなり、将来的な見通しも立てやすくなるのも利用権方式のメリットのひとつです。

また、各事業所によって入居時に支払う前払金の金額、それに伴う毎月の支払額は異なります。

賃料などの支払額はおおむね50%の人が継続して居住するであろう「想定居住期間」をもとに設定されますが、入居する人の年齢や介護状態によっても想定される余命は変わるでしょう。

事業所ごとに想定居住期間の考え方も異なるため、契約前には契約書や施設の説明書を十分に確認しておいてください。

支払い方法によって月々の払いを安くできる

詳しくは後述しますが、支払い方法には「前払い方式」と「月払い方式」があります。

居住する部屋のみの契約である建物賃貸借方式の場合だと、月々部屋代のみを支払っていくため、初期費用としては少ないですが長く住めば住むほど支払いの累計金額は多くなります。

一方で、利用権方式なら賃料の全額または一部前払いができるので月々の支払額を少なくできます。

多くの事業所で利用権方式の形が取られているものの、前払いなしで利用することも可能なので、個人にあった支払い計画を考えましょう。

また、利用権方式は居室に対する更新料や手続きもないので、支払額の追加を心配したり更新手続きに煩わしさを感じたりすることもありません。

利用権方式のデメリット

利用権方式デメリット

利用権方式のメリットについて解説しましたが、デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?

結論からいうと利用権方式のデメリットは、あまり介護が必要ない人には向いていないこと、居住スペースの相続権がないことです。

介護が軽度・不要な人は余分に支払う可能性がある

先述したように、利用権方式は居住する部屋の賃料と介護費用や食費などの日常的な生活費用が合算されたものになります。

介護内容も事業所ごとに決められているので、入居者本人は生活が自立していたり介護が軽度だったりする場合だと、事業所から提供されるサービス内容が不要なことも。

外部の介護サービスを利用することも可能ですが、利用権方式で契約して余分な金額を支払うのは得策とはいえません。

今後の将来を見越して介護が必要ないうちから入居したい、という人以外は建物賃貸借方式と外部の介護サービスを併用するなどの方法も選択肢のひとつでしょう。

第三者には相続権がない

利用権方式とはその名のとおり、契約者がその事業所から受けられる住まいや生活支援の権利であり、賃貸借的要素を含みません。

現在も多くの議論が行われるなかで、第三者にも同等の居住の権利を与えるべきと考えられています。

しかし、利用権方式の現状は入居者の死亡を持って契約終了となるため、家族など第三者に権利が相続されないのが現状です。

利用権方式以外の契約方法

利用権方式以外の契約方法

全国の介護付き有料老人ホームのほとんどが利用権方式であることをお話ししましたが、そのほかの契約形式には「建物賃貸借方式」というものもあります。

建物賃貸借方式のなかにも「終身建物賃貸借方式」があり、名前は似ているものの内容は異なるので注意が必要です。

建物賃貸借方式

建物賃貸借方式とは賃貸住宅における居住の契約形態とサービス部分の契約が別になっているものをいいます。

月々の家賃のみを払っていく契約形式なので、介護が不要な人、少しの介護があれば生活できる人にはおすすめです。

希望の施設への入居待ちなど短期で使用する場合も多いですが、入居が長期になると前払い入居した場合よりも支払い累計額が多くなるので注意しましょう。

また、建物賃貸借方式は借家借地法の適用であり、入居者の死亡により契約終了にはなりません。

更新料や更新手続きが必要になりますが、家族にも居住する権利が与えられるのは大きな利点といえます。

終身建物賃貸借方式

終身建物賃貸借方式は「高齢者の居住の安定確保に関する法律」の規定に基づき都道府県知事から認可を受けた施設でのみ契約できます。

名前のとおり入居期間は終身で、入居者の死亡をもって契約終了です。

また利用可能年齢は60歳以上と条件があるものの、夫婦で入居する場合はどちらかが60歳以下でも入居できるようになっています。

認可を受ける条件として、指定された床面積があることやバリアフリーであることが規定されているので、住みやすい環境といえるでしょう。

更新料は不要ですが第三者への相続権もないので、通常の建物賃貸借方式と名前は似ていても内容が異なることに注意が必要です。

利用権方式有料老人ホームの種類

利用権有料老人ホームの種類

有料老人ホームには以下の3つがあります。

  • 介護付き有料老人ホーム
  • 有料老人ホーム(住宅型)
  • 有料老人ホーム(健康型)

それぞれ入居対象の違いにともない、提供されるサービスも異なるためそれぞれの特徴について知っておくことは重要です。

介護付き有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームは要介護者(原則65歳以上)に対して、日常生活上の世話や機能訓練等を提供する施設です。

もちろん、生活が自立している人や要支援状態の人全てが入居の対象。

入居者へのサービスは施設職員もしくは外部への委託により提供されるため、施設サービスのみの利用であれば、食費や家賃、管理費等を月々支払います。

外部の介護サービスを利用する場合、介護保険の負担額に応じた金額を支払うようになるので、事前に確認しておきましょう。

有料老人ホーム(住宅型)

有料老人ホーム住宅型は食事や洗濯、掃除、健康管理など日常生活上の必要なサービスのいずれかを提供する施設。

施設からの介護サービスの提供はないので、介護が必要になった際は入居者自身で外部委託の介護支援サービスを利用して生活する必要があります。

有料老人ホーム(健康型)

住宅型と同様に食事や洗濯、健康管理など日常生活において必要なサービスを受けながら生活ができる施設です。

施設によっては身体機能の維持や向上を図るためジムのような設備が整っている場所もあります。

デメリットとしては、介護が必要になると契約を解除して施設から退所しなければならないこと。

施設からのサービス提供もなく、地域の外部サービスとの併用もできないので、完全に生活が自立している人が対象になります。

利用権方式の支払い方法

利用権方式支払い方法

利用権方式や建物賃貸借方式など契約方法の違いについて解説してきましたが、利用権方式による契約でも支払い方法によって通算での支払額は変動します。

支払い方法は「前払い方式」と「月払い方式」に分かれ、自身にあった支払い方法を選択することが重要です。

前払い方式

終身にわたって受領する家賃やサービス料を前払金として、一部または全額を受領するものを前払い方式といいます。

入居時に支払うお金は敷金や入居一時金ともいい、想定居住期間に相当する家賃の一部、もしくは全額を支払うことが多いです。

寿命は誰にもわかりませんが、想定居住期間を元にした支払いなら将来的に支払う金額が入居時にわかるので、先々の支払いの見通しがつきやすくなります。

万が一想定よりも早く退所した際も、事業所の規定する計算方法を元に前払金から還付されるので安心です。

また、想定居住期間を超えても追加の家賃徴収はないので、長生きするほどお得といえるでしょう。

なんらかの影響で施設料金が下がっても差額の返金がないこと、入居前に支払う金額が大きいため資金準備が大変などのデメリットもあるので注意が必要です。

月払い方式

月払い方式は前払金を受領せず、家賃やサービス費用を月払いする方式をいいます。

メリットとしては、施設の利用料金が下がった場合に支払い金額も下がること、入居時に前払金を支払う必要がないので、入居のハードルが低いことが挙げられます。

自身の希望する施設の入居待ち期間にも利用しやすいのは大きな利点といえるでしょう。

逆に料金が上がれば支払額も増えますし、前払い方式に比較して月々の支払額は多めに設定されていることがほとんとです。

最終的な支払い費用も不透明で、十数年居住すると前払金よりも多く払っていたということも。

長期間入居の際は入居者の状態なども考慮して、最適な支払い方法を選択しましょう。

利用権方式と前払金の現状

利用権方式と前払いの現状

利用権方式の施設へ入居する際の前払金は高額なうえに、月々の支払額にも関係してくるので非常に重要な役割を担っています。

昔は数千万円という多額の入所一時金も2000年の介護保険制度の導入にともない、現在では数百万円からと資金準備のハードルは下がりました。

さらに、2006年には老人福祉法の改正が行われ、入所時に支払う前払金の根拠や計算方法を書類へ記載するほか、クーリングオフ制度や前払金の保全義務化などが定められるなど前払金に関する要件は整備されているといえます。

一方、厚生労働省は料金を前払いするケースは年々減少傾向にあると2019年に報告しました。

実際の報告では、有料老人ホーム(介護付き、住宅型)、サービス付き高齢者住宅で8割以上が全額月払いを選択しています。

前払いを選択しているのは介護付き有料老人ホームでさえ2〜3割程度です。

同資料で報告されている前払金の償却期間の平均は68.3ヶ月で約5〜6年にあたりますが、介護付き有料老人ホームの2割以上が前払金の3〜4割を初期償却しています。

介護付き有料老人ホーム利用者の入居期間は約半数が1〜2年未満と報告されている背景からも、そもそも短期〜中期利用する入居者の方が多いことがわかります。

また、緩和されたといっても前払金が高額なことや初期償却で前払金の半額は消えてしまうことも、全額月払いを選択する人が多い理由といえるかもしれません。

利用権方式まとめ

利用権方式まとめ

ここまで利用権方式について解説してきました。

利用権方式は契約方式のひとつで、家賃と生活支援サービスがひとまとめにされたものをいいます。

そのため、生活が自立している人や介護が軽度な人にとっては、あまり向いてないといえるでしょう。

支払い方法に関しても現状では月払いが多く、全ての施設で約8割以上というデータが出ています。

入居や支払い方法の設定の際には、入居者自身の年齢や介護状態を加味した上で、自分に合った契約方法を見つけてみてください。

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