夢遊病という睡眠障害をご存知でしょうか。名前だけなら聞いた事があるという人は多いと思います。
今回は、そんな夢遊病についてどういった症状があるのか、なぜ起こってしまうのかを紹介していきます。
夢遊病とは?
夢遊病は睡眠障害の一種で「睡眠時遊行症」や「夢中遊行症」と呼ばれることもあります。
寝ている間に無意識のまま起き上がったり歩き出したりするなどの行動を起こし、その後再び寝るなどの行動が挙げられます。
しっかりと行動はするが本人に記憶が一切ないのが特徴です。
行動する時間は短い人もいますが最長で30分程度も行動していた記録もあります。
小児期や学童期に多い病気ですが、大人でも発症することがあります。
夢遊病の症状
1番多いのが立ち上がったり歩いたりすることです。
人によっては、冷蔵庫を開けて何かを食べたり、服を着替えたりすることもあります。どの症状も一度や二度だけではなく複数回そういった行動を繰り返します。
歩いたり着替えたりするだけなら問題はありませんが、風呂に入ろうとしたり、車を運転しようとしたりした事例もあります。
これらは人の命に関わることなのでとても危険です。
夢遊病の特徴として、本人に意識や記憶がないということがあります。まれに行動をしている最中に目がさめる人もいますが眠っている時に行動していた記憶はありません。
夢遊病になる原因
夢遊病になる原因として「環境要因」と「遺伝要因」があると言われています。
それぞれについて説明していきます。
環境要因
環境要因としては、鎮静薬の使用や睡眠リズムの乱れ・睡眠不足、身体的または精神的ストレスが挙げられます。
疲れている時や昼に過度なストレスを感じた場合に多く症状が出ます。
興奮状態のままで眠ってしまうことも原因として挙げられています。
また、発熱を伴う感染症やアルコールの摂取なども発生する要因ではないかと考えられています。
遺伝要因
夢遊病を発症している人のおよそ80%が家族に睡眠障害の病歴がある可能性が指摘されています。
両親に病歴がある場合、遺伝する可能性はさらに高まります。
夢遊病かどうかの診断
夢遊病の症状は寝ぼけている時の状態と似ています。その行動が夢遊病の症状なのか寝ぼけているのかを判断するには、本人の意識があるかどうかを確認してください。
寝ぼけている場合は、ぼんやりしていたり受け答えがあいまいだったりしますが、本人の意識はある状態です。
それに対して、夢遊病は眠りが深い時(ノンレム睡眠)に症状が出るので、基本的には本人の意識がありません。そのため、起きた後でも行動していた記憶がありません。
病院で検査をする際には、病院に泊まってビデオ撮影をしながら寝ます。その際にポリソムノグラフィ検査という検査を行います。この検査は、脳波や筋肉が眠っている間にどういう状態なのかを記録する検査です。
夢遊病の対策
自宅でもできる対策は、大きく分けて睡眠不足の解消とアルコール摂取を控える、ストレスをためすぎないの3つです。
それぞれについて詳しく紹介していきます。
睡眠不足の解消
夢遊病の原因の一つに睡眠不足があります。最近あまり睡眠時間が足りていないなと思うのであれば、十分に睡眠時間を確保しましょう。
夢遊病だけでなく、睡眠障害全体に言えることですが、解消するためには睡眠時間をしっかりと確保して日々の睡眠のリズムを正しくすることが必要と言われています。
また、睡眠の質を上げることも重要です。
睡眠の質を上げるには、「入浴を就寝の2時間前には終わらせる」「枕やマットレスを自分にあったものにする」「寝酒をしない」などがあります。
他にも自宅で簡単にできるものがたくさんあるので、気になる方は調べてみて下さいね。
アルコールの摂取を控える
飲酒をすることで夢遊病が発症することもあります。アルコールを摂取することで睡眠の質が下がることがあります。摂取する量にもよりますが、もし夢遊病の症状が出ているのであれば、アルコールを摂取する量を少なくしたり、摂取しないようにしましょう。
症状が軽い場合は、お酒を控えるだけで症状が緩和されることもあります。
ストレスをためすぎない
精神的ストレスをためすぎていることも夢遊病を発症する原因のひとつとなる可能性があります。夢遊病の症状が出始めた頃から環境の変化や過度なストレスを抱えたりしていませんか。もし心当たりがあるのでしたら、気分転換をしてみたり休暇を取ってみてください。
新しい趣味を見つけたり、運動してみたりするだけでもストレスを発散できますよ。
ストレスは夢遊病だけでなく、他の病気や体調不良の原因にもなります。
ストレスがたまりやすい現在、健康に過ごすためにストレスを軽減・緩和できる方法を探してみてください。
夢遊病かどうかを自己判断する方法
夢遊病は寝ているときに発症するので自分ではなかなか気が付かないことがあります。
これから紹介する内容に当てはまったら夢遊病の可能性を考えてください。
寝言を言っている場合も夢遊病の可能性があります。寝ぼけていることがあるや会話した内容を覚えていないなど、指摘を受けた場合も気を付けてください。
ただし、ここで紹介してるのは夢遊病の可能性があるかどうかを判断する材料です。
当てはまらないから必ず問題がないというわけではありません。もし気になるようでしたら必ず病院に行って診断を受けてください
子どもと大人の夢遊病の違い
夢遊病は子どもだけでなく大人も発症する可能性があります。
子どもと大人の夢遊病では少し内容が違います。
子どもの夢遊病は家の中を歩き回ったり、寝言を話したり、寝ながら食事をしたりなど、単純な行動が多いです。
対して大人の夢遊病は、冷蔵庫を開けて何かを食べたり、外出して買い物したり、車を運転したりなど、複雑な行動が多くみられます。行動以外の特徴として、夢遊病以外の睡眠障害や精神障害を併発することもあります。
また、思春期以降に自然治癒する子供に対して、大人の夢遊病は自然治癒しづらいです。
夢遊病は治療すべき?
大人の夢遊病は自然治癒しにくく、外出したり車を運転したりする行動があるので治療するのをおすすめします。睡眠障害は専門に扱うクリニックや睡眠外来のある総合病院などで受診することができます。
病院の検査は、睡眠の状態を調べるポリグラフを使用し、脳波や筋肉の動きを観察、調査します。
夢遊病と診断された場合は、生活習慣の改善と投薬治療となります。大人の夢遊病は、睡眠リズムがくずれたり、アルコールの摂取が原因で起こることがあります。
これらは生活習慣を改善することで症状が緩和されることがあります。
また、ストレスでも発症することがあるので、ケアも行ってくれます。生活習慣の改善で症状が落ち着かない場合は、少し効果の強い薬を用いることで症状を緩和させ、改善されるように治療していきます。投薬治療を行う際には必ず医師の指示に従い、決められた量の薬を決められただけ服用するようにしましょう。
効果の強い薬には副作用が伴うことがあるので、あまりおすすめはしません。
もし少しでも夢遊病の疑いがあるのであれば、一度病院で検査してもらってください。
似た症状のある睡眠障害
睡眠障害には夢遊病以外にもいくつもの種類があります。
夢遊病に症状が似ているものを紹介していきます。
夜驚症
「やきょうしょう」と読む睡眠時随伴症(パラソムニア)の一種です。
子どもに多い症状で、ノンレム睡眠の時に発症します。
主な症状は、恐怖体験のように大声で泣いたり、叫んだりします。また、心拍数や呼吸数が上がったり汗をかいたりします。
夢遊病と同様に眠っている間の意識はないので、なだめようと話しかけても反応はありませんし、発症していた記憶もありません。
3歳〜6歳の子どもによくみられる症状で、思春期までに症状が治まることが多いです。
そのため基本的には、治療が不要とされています。ですが、一晩に何度も発症したり、起きることで睡眠 不足になったりして症状がひどい場合には、投薬治療を行うこともあります。夜驚症は、睡眠の前半に起こることが多く、一晩に一回だけのことが多いです。
一晩に何度も起こる場合や一回の時間が10分以上続くような場合には、他の病気の疑いもあるので、一度病院で診察してもらうのをおすすめします。
夜驚症が発症した場合には、本人に意識がないため、あやしたり話しかけても反応しません。無理に抑えようとしたらより悪化する可能性もあるので、子どもがケガしないよう気を付けて見守ってください。
カタスレニア
寝ているときにうなっている場合には、カタスレニアの可能性があります。
カタスレニアとは、慢性呼吸障害の一種です。いびきと似ているように思われますが、実際には空気が喉から抜けていくのを防ぐようなうなり声がします。
いびきや寝言、睡眠時無呼吸症候群などと似ているのですが、声の大きさが違います。
うなり声が出る原因は喉の声門と呼ばれる声を出すために空気の量を調節している器官が寝ている時に引き締められていることです。
発症する環境的原因は、ストレスや暴飲暴食、寝る前のアルコールの摂取と言われています。どれも睡眠の質を低下させるものですので、見直す必要があります。
また、急激に太ったりして気道が狭くなると寝ているときにいびきやうなり声を上げる可能性があります。
すぐに痩せることは難しいので一度病院で診察を受けるといいかもしれませんよ。
睡眠関連摂食障害
睡眠関連摂食障害は神経性大食症と呼ばれる過食症が寝ているときにあらわれるものです。主な症状は、寝ている間に寝たまま歩きだし、そのまま何か食べるというものです。食べて満足した後は、そのままベッドに戻って寝ます。
女性に多く、摂食障害と一緒に発症することが多いです。原因の一つとして無理なダイエットがあります。
過度な食事制限をすることによって食欲が満たされず、寝ているときに無意識に大量に食べてしまいます。
ダイエットをしているのに体重が大きく増える場合には、この症状を疑ってもいいかもしれません。
また、食べた記憶もないのに食べた形跡や冷蔵庫などの食料が減っていることがあるのも睡眠関連摂食障害の特徴です。
治療方法は、投薬治療がメインになります。
睡眠障害を専門に扱うクリニックで診療してくれます。また、精神的なストレスが原因の一つと言われているので、精神科や心療内科に行ってみるのもいいかもしれません。
レム睡眠行動障害
レム睡眠行動障害は50歳以上に多く症状がみられる睡眠障害です。
症状は夢遊病と同様に眠っているのに動き回ったり、大声を出したり、暴れたりします。
夢遊病と違うのは、症状が出るのが眠りの浅い時(レム睡眠)という点です。眠りが浅い時は、夢を見ている時間なので実際に見ている夢の内容に沿って行動します。夢の内容を覚えているのも夢遊病と異なる点です。
レム睡眠行動障害の時に見ている夢は、恐怖や怒りなど感情を伴うものが多いです。
そういった夢を見ているから大きな声で叫んだり、暴れたりという行動をします。
成長とともに自然治癒する夢遊病や夜驚症とは違い、年齢を重ねるごとに発症率が高くなります。レム睡眠行動は夢遊病などと違い暴れてたりすることが多いので、本人や周りの人がけがをしてしまうリスクが高くなります。自分や周りを守るためにも少しでも症状が出た際には、早めに病院を受診するのをおすすめします。
レム睡眠行動相も精神的なストレスが原因で起こる可能性があるので、日頃のストレス緩和が大切です。
症状が出た際には、クッションを多めに置くなどの対策をして、
自分や周りの人がけがをしないようにしましょう。
まとめ
夢遊病は子どもが発症しやすい睡眠障害です。大人でも発症する可能性があります。
子どもの夢遊病は、成長とともに自然に治ることがほとんどなので、けがなどがないように見守りましょう。
大人の夢遊病では、車の運転や料理などより複雑な行動を伴うため、危険があります。病院で診察してもらうことをオススメします。
睡眠障害の原因として最も多いのが精神的なストレスとアルコールの摂取です。
睡眠不足だったり、夢遊病などの睡眠障害で悩んでいるのであればアルコールの摂取を控えてみて下さい。
そして可能な限り日々のストレスの緩和とケアをしてみてください。
改善されないのであれば投薬治療もできます。睡眠障害を専門で扱っているクリニックや総合病院、精神科や心療内科を受診してみてください。