睡眠ノウハウ

入眠できないのは不眠症なの?原因や寝付きやすいコツを紹介

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「ベッドに入ってもなかなか眠れない…。これって不眠症?」
「どうして、すぐに眠れないんだろう?なにか原因があるの?」
「寝付きやすくなるコツを知りたい」

このようなお悩みはありませんか?

厚生労働省が行った睡眠についての調査によると、日本人の5人に1人が「何らかの不眠がある」と回答しています。よくあるお悩みであることがわかるでしょう。

この記事では、入眠できない原因や、寝付きやすくなるコツ、そして入眠障害の治療薬や漢方薬を紹介しています。自分に合った対策をとっていただき、みなさんの入眠に関するお悩みが解消できれば幸いです。

1. 入眠障害とは

夜の部屋

この記事の監修者
睡眠健康指導士、建築物環境衛生管理技術者
佐々木崇志
東北大学大学院薬学研究科修了。修士(薬科学)、建築物環境衛生管理技術者。 修了後は臨床研修指定病院で医局秘書や学生担当として全国の医療を志す学生や医療従事者と携る。勤務していく中で睡眠に関する訴えが医療従事者にも多い事に気づき、自身も医療従事者や患者の助けにならないかと考えるようになり個人で活動を始める。現在は東北を活動の拠点として睡眠(体内時計・時計遺伝子)の研究の経験、資格の知識を生かしながら睡眠啓蒙活動を行なっている。

入眠障害は不眠症の一種

入眠障害とは、寝床についても30分から1時間以上眠れない状態が1ヶ月以上つづき、日中の生活に不調が現れる症状のことです。

これは、不眠症とよばれる病気の一種で、原因に応じた適切な対処をしないで放置すると、悪化してしまい、睡眠専門外来での治療が必要になることもあります。

また、不眠がつづくと、認知症、糖尿病、高血圧といった病気の発症リスクを高めることにつながったり、肥満リスクが高まったりするため、これらのリスクを下げるためにも睡眠が大切であるといえるでしょう。

入眠障害以外にもある不眠症

すぐに眠りにつけない「入眠障害」の他にも、不眠症には以下の症状があります。これらの症状は、複数が組み合わさっておこることもあります。

  • ①中途覚醒

夜中に目が覚めて、その後眠れなくなる症状のこと。

  • ②早朝覚醒

希望していた起床時間より、2時間以上早く起きてしまう症状のこと。

  • ③熟眠障害(熟眠感欠如)

眠りが浅く、目覚めた時に、「十分に眠れた」という満足感が得られない症状のこと。

不眠症は生活習慣病の一種

入眠障害などの不眠症は、生活習慣病に分類されます。
生活習慣病とは、食習慣や運動習慣などの、生活習慣が原因となって起こる疾患です。

次の項目で、具体的な原因となる習慣についても見ていきましょう。

 

2. 入眠できない原因

頭痛

入眠できない原因は人それぞれです。生活習慣やストレスのほか、疾患が原因となっている場合もあるため、原因を正しく理解するようにしましょう。

①生活習慣の乱れ

まず、毎日寝る時間が違うなど、不規則な生活がつづくことで、体内時計が乱れて、適切な時間に眠りにつくことができなくなる可能性があります。
海外渡航による時差ボケや、勤務シフトによる昼夜逆転などのライフスタイルの変化は、睡眠に影響することが多いです。

②対人関係や仕事のストレス

入眠障害は、ストレスによっても引き起こされます。

ストレスとは、嫌なことがあったときだけに感じるものではありません。
「明日の遠足が楽しみで眠れない」という現象も、知らず知らずのうちにストレスを感じているため、と言えます。

③薬、アルコール、カフェインの影響

抗パーキンソン病薬、ステロイド製剤、気管支拡張薬、そして自律神経系や中枢神経系に作用する薬などを飲んでいる場合、入眠障害の原因になりうると言われています。

また、アルコールが代謝されて生じるアセトアルデヒドや、コーヒーなどに含まれるカフェインには、覚醒作用があるため、寝る前に飲むと眠りを妨げてしまうことがあるでしょう。

④基礎疾患(呼吸器疾患)

喘息発作など、呼吸器の基礎疾患があると寝付きが悪くなります。
基礎疾患がある場合は、一般的な対策だけでは入眠障害の改善にはつながらないことがあるため、医療機関への相談がおすすめです。

⑤精神疾患(うつ病、不安障害)

うつ病、不安障害、適応障害といった精神疾患がある方は、眠りに関するお悩みを持つ場合も多いです。眠れないことがさらに不安を呼び、より眠りにくくなるという悪循環におちいってしまうこともあるでしょう。

 

3. 入眠障害の治し方や寝つきやすいコツ

ぐっすり眠る女性

寝つきやすくなるためには、入眠をさまたげる生活習慣をやめて、睡眠誘導しやすい環境をつくることが大切です。

①メリハリのある規則正しい生活

生活習慣病の一種である入眠障害をなおすには、やはり規則正しい生活が効果的です。
毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝るようにしましょう。

  • 朝起きたら一番にカーテンを開けて朝日を浴びる
  • 昼寝をする場合は15時まで

といった、自分の中でのルールを決めておくと良いかもしれません。

そのほかにも、

  • 適度に運動する
  • 暴飲暴食をしない
  • 寝る前にお酒を飲みすぎない

など、生活リズムを整えるための工夫をすることで、寝付きやすさが格段によくなってきます。

②食事は寝る3時間前まで

食べてから3時間は、消化や吸収のために胃腸が活発に働いている時間です。
食べたものが胃に残っている状態で寝ようとすると、胃酸が逆流するなど、消化不良によって入眠しにくくなります。

寝る3時間前までには夕食を食べ終え、消化が終わるまでリラックスして過ごすとよいでしょう。

③カフェインは寝る8時間前まで

前に述べたように、カフェインには覚醒作用があります。
コーヒー、紅茶、緑茶などのカフェインが含まれる飲み物は、寝る8時間前までに飲むようにしましょう。

④入浴は寝る1時間〜2時間前まで

入浴すると、深部体温が上昇し、そこから1時間〜2時間かけて、元の体温に戻ります。人体は、深部体温が下がるときに眠気がおこるようになっているため、この性質を利用してスムーズに入眠するようにしましょう。

また、湯船に浸かってリラックスすることで、副交感神経の働きを高め、寝付きやすくなります。
もし、普段はシャワー浴が中心という方は、なるべく湯船に浸かるようにしてみてください。

⑤ブルーライトは寝る2時間前まで

ブルーライトとは、可視光線(人が目で見ることができる光)のなかで、もっともエネルギーが高く、まぶしく感じる光線です。LEDを使用した、パソコン、スマホ、テレビの液晶画面からは、ブルーライトが放射されています。

寝る前にベッドの中でスマホを見るのが習慣になっている、という方は多いのではないでしょうか?

ブルーライトは太陽光にも含まれているため、夜に強いブルーライトを浴びると、脳に朝だと勘違いさせてしまい、メラトニン(睡眠ホルモン)の分泌を抑えてしまいます。

もし、どうしても寝る直前までスマホを見たい、という場合は、スマホのナイトモードや、外観を黒にする機能などを使うようにしましょう。

⑥自分にあった寝室の環境づくり

寝室の環境を心地よいものにすることで、入眠しやすくなるだけでなく、睡眠の質が上がり、日中も気持ちよく過ごすことができるようになります。

寝室の環境づくりには、以下の点を意識するとよいでしょう。

  • 自分にあったベッド(マットレス)をつかう
  • 呼吸がしやすい高さの枕をつかう
  • 自分がリラックスしやすい照明、温度に調整する

⑦アロマテラピーで睡眠誘導

アロマテラピーとは、天然の植物からわずかに抽出できる貴重な精油(エッセンシャルオイル)を使った芳香療法です。

人間の大脳には、理性をつかさどる「大脳新皮質」と、情動や本能をつかさどる「大脳辺縁系」があることをご存知でしょうか?聴覚、視覚、味覚、触覚から伝わった情報は、まず大脳新皮質を通ってから大脳辺縁系に送られますが、嗅覚から伝わった情報だけは、ダイレクトに大脳辺縁系に送られます。

そのため、アロマテラピーでは、すばやく気分を変えたり、眠気を引き起こしたりすることが可能です。

リラックス効果の高い精油(エッセンシャルオイル)としては、以下のようなものがあるので、ぜひ参考にして使用してみてください。

  • ラベンダー(不眠障害の対策に人気)
  • ネロリ(不安感をとりのぞく作用)
  • ベルガモット(リフレッシュ作用)
  • イランイラン(心を落ち着かせる作用)

⑧ヒーリングミュージックで睡眠誘導

ヒーリングミュージックとは、癒しの効果がある音楽で、以下の2つの特徴があります。

  • 脳が休んでいる時の脳波(=アルファ波)がでる
  • 人が心地いいと感じる、「1/fゆらぎ」という周波数をもっている

ヒーリングミュージックを通して、脳に直接「心地いい」を届けることで、眠りにつきやすくなるでしょう。

⑨睡眠時間の長さより質の高さを意識

適切な睡眠時間には個人差があります。一般的には、7〜8時間の睡眠時間が理想といわれていますが、年齢や、季節によっても個人差があるため、一概に「○時間寝るべき」とは言えません。

「日中元気に過ごせているか」をバロメータとして、質の高い睡眠を意識するようにしましょう。

 

4. 入眠障害の治療薬や漢方薬

頭痛薬

なかなか眠りにつけない日々がつづく場合、治療薬や漢方薬をためしてみるのも、一つの対策となるでしょう。
代表的な睡眠薬には、GABA受容体作動薬、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬の3種類があります。

治療薬①GABA受容体作動薬

GABAとは、ガンマアミノ酪酸(Gamma Amino Butyric Acid)の略称で、アミノ酸の一種です。GABAは、緊張やストレスをやわらげ、リラックス効果をもたらします。

最近は、GABAの含まれたチョコレート菓子も発売されているため、目にしたことがある方も多いかもしれませんね。

このGABAの働きを促すことで、脳を休ませ、眠りに導くのがGABA受容体作動薬(ベンゾジアゼピン受容体作動薬)です。従来の多くの睡眠薬は、この薬に分類されます。

ただし、この薬には依存性があるため、慎重に服用するようにしてください。

治療薬②メラトニン受容体作動薬

メラトニンは、体内時計に働きかけることで、睡眠と覚醒のリズムをコントロールして自然な眠りを誘う作用があり、「睡眠ホルモン」ともよばれています。

私たちが朝起きて、目に光が入ってから14〜16時間後に、脳の松果体というところからメラトニンが分泌され、その作用で深部体温が下がり、眠気を感じる仕組みです。

メラトニン受容体作動薬は、メラトニンと同じ働きをします。

さきほどのGABA受容体作動薬と比べて、メラトニン受容体作動薬には依存性がありません。

治療薬③オレキシン受容体拮抗薬

オレキシンとは、脳内にある神経伝達物質の一種で、起きている状態(覚醒状態)を維持する働きがあります。

オレキシン受容体拮抗薬は、オレキシンの働きをおさえ、覚醒状態から睡眠状態へと導く薬です。

こちらも、依存症がない薬ですが、「悪夢を見る」とも言われることもあるため、デメリットをよく理解してから服用するようにしましょう。

漢方①柴胡加竜骨牡蛎湯

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)は、小柴胡湯をベースに、「竜骨」と「牡蛎」を加えた処方です。
イライラ、緊張、不安といった神経のたかぶりをしずめて、心を落ち着かせることが期待できます。

漢方②加味逍遙散

加味逍遙散(かみしょうようさん)は、自律神経を調整し、血行を促進する作用があります。
交感神経が優位になったことによるイライラやのぼせがある方におすすめです。

漢方③加味帰脾湯

加味帰脾湯(かみきひとう)は、消化器のはたらきを助けることによって、気持ちを落ち着かせ、精神を安定させる作用があります。
貧血気味な方、精神的ストレスや不安感がある方、そして胃腸に不調がある方におすすめです。

漢方④酸棗仁湯

酸棗仁湯(さんそうにんとう)には、神経を鎮める作用があります。
体力が低下している方、心身が疲労している方、そして神経症による睡眠障害の方におすすめです。

 

5. まとめ

眠る女性

不眠症の一種、「入眠できない」というお悩みについて解説してきました。

入眠障害は生活習慣病の一種で、ストレス、精神疾患、薬などのさまざまな原因が考えられます。
まずは自分が眠れない原因を正しく理解し、自分に合った対策をとるようにしましょう。

眠りやすくなるコツや、治療薬、漢方薬もたくさん紹介してきたので、効果がありそうだと思ったものを、ぜひ取り入れてみてください。

入眠障害の改善だけでなく、睡眠の質も高くなり、心地よい1日を送れるようにしましょう。

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