睡眠と健康にはどんな関係があるのか?
睡眠が正常でない(きちんと取れない)とどうなるのか?
とても気になると思います。
ただ、ネット上には様々な情報がありすぎて、どの情報を読めばよいのか、お悩みではりませんか?
実は、睡眠は健康にとても関係しています。
そこで、睡眠と健康について気になっている方に正しい情報をお伝えしたく、厚生労働省の『生活習慣病予防のための健康情報サイト:e-ヘルスネット』の内容をもとにまとめました。このサイトは、睡眠と健康についての情報提供がなされています。
・睡眠と健康長寿の関係について
睡眠が正常に取れない病気として、不眠症、睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシーなどの過眠症、睡眠障害などがあげられます。
病気名 | 種類、状態 | 症状など |
不眠症 | 入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害などの睡眠問題が1ヶ月以上続く | 日中の倦怠感、意欲や集中力の低下、食欲の低下など |
過眠症 | 睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー | 昼間の眠気が強く、目覚めていられない状態に陥る |
睡眠障害 | 体内時計の乱れにより、入眠時間が不規則になる | 日中の倦怠感、意欲や集中力の低下、食欲の低下など |
これらの病気があると、日中の倦怠感、意欲や集中力の低下、食欲の低下などの不調が出現するだけでなく、転倒や転落事故、交通事故などの危険性が高まります。また、睡眠時無呼吸症候群は放置すると生活習慣病を悪化させ、うつ病の発症率を上げてしまいます。このように正しい睡眠が取れない状態が続くことで健康が蝕ばまれてしまいます。
特に、子供や高齢者、女性、肥満がある人、交代勤務を行なう人には、それぞれ別の注意が必要となります。
子供の生活時間の夜型化や睡眠時間の減少は、睡眠時に分泌される成長ホルモンの分泌量を低下させ、成長に悪影響を与えます。この成長ホルモン分泌量の低下は肥満にもつながり、さらに睡眠時無呼吸症候群やうつの発症率を上げる恐れがあります。
加齢により健康な人でも睡眠が浅くなり、中途覚醒や早朝覚醒が増加します。また、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害も起きやすくなるため、高齢者では、いかに快眠につなげられるかが重要ポイントとなります。
女性は、「月経」、「妊娠および出産」、「閉経」などにより大きなホルモン変化にさらされ、これに伴って睡眠も変調をきたしやすくなります。そのため、月経前の眠気、妊娠中の眠気や不眠、出産後の睡眠不足、更年期の不眠など、様々な睡眠の問題が生じます。
肥満の方は、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が起きやすくなり、転倒や転落事故、交通事故などの危険性が高まります。長期にわたり睡眠不足を感じているのであれば、医師の診断を仰ぎ、治療することが大切です。
交代勤務を行なう人は、夜に明るい照明の下で働くことになるうえ、短期間で勤務時間が変化するため、体内時計のずれを修正しづらくなります。そのため、正常な睡眠を取ることが難しくなり、望ましい時刻に入眠し、覚醒することができなくなることがあります。
このように、睡眠は健康に大きな影響を与えるため、健康で長生きするためには、睡眠をきちんと取ること(快眠)が重要となります。この睡眠をきちんと取るためのポイントについては、後ほど、解説いたします。
ところで、睡眠をきちんと取るためには、何時間、寝れば良いのでしょうか?
・最適な睡眠時間はどれ位なの?
厚生労働省が作成した『健康づくりのための睡眠指針 2014』では、個人差はありますが、日本人の標準的な睡眠時間は 6 時間以上 8 時間未満くらいとしています。成人の約6割がこの範囲に入っていることから、この範囲が妥当と判断されました。
なお、夜間の睡眠時間は 人種を問わず、加齢により変化することが明らかとなっています。世界の65本の論文データをまとめた研究では、10 歳代前半までは 8 時間以上、25 歳で約 7 時間、45 歳で約 6.5 時間、 65 歳で約 6 時間というように、加齢により少しずつ減少していくことが分かりました。
ただ、必要な睡眠時間以上に長く睡眠をとったからといって、健康になるわけではありません。逆に寝過ぎが病気の原因になることもあります。ストレスになり余計に眠れなくなるため、『一日に絶対に6~7時間以上寝なければ』などと考えすぎないことが大切です。『人によって最適な睡眠時間には差異があること』、『加齢により睡眠時間が少し短くなることは自然であり、問題ではないこと』を理解して、『日中の眠気で困らない程度であれば良い』という意識で、自然な睡眠を取るようにしましょう。
ここで、自然な睡眠と説明しましたが、自然な睡眠とはどのような状態を指すのでしょうか?
『健康づくりのための睡眠指針 2014』では、『眠るための不適切な努力や眠りに対する不安・恐れは、寝つきを悪化させ、不眠を習慣化させる素地となる 』、『適切な時刻になり、適切な環境が整っていれば、眠りは自然に訪れる』とあります。つまり、自然な眠りというものは、『自分が眠くなる時間に、睡眠に適した環境(暗さ、静かさ、寝具、服装、室温など様々な環境要因がありますが)で安静にしていれば自然に入眠がおこる』ということです。
しかし、「さあ、今から眠るぞ!」といった眠ろうとする強い意気込みや「眠れないのではないか、眠れなかったらどうしよう」などの不安は、逆に脳を覚醒させ、自然な入眠を遠ざけることになりますので、リラックスしてあまり考えないようにしましょう。
では、自然な睡眠を促すためには、どうすればいいのでしょうか? それは、睡眠習慣を正すことが大切だと考えられます。
夜更かしなどを避け、生活習慣の一つでもある睡眠習慣を規則正しいものにすれば、自然な眠りに近づけると思います。毎日寝る時間が大きく変わる状況では、生活リズムも乱れがちになり、寝つきが悪くなったり、睡眠時間もバラバラになったりするため、自然な睡眠とは程遠くなるからです。
また、眠ってもすぐに起きたり、眠りが浅かったり、何度もトイレに行ったりすると、せっかく合計で7時間眠れても、睡眠不足になってしまいます。つまり、睡眠は『時間ではなく質が大事』であり、この睡眠の『質』が健康のキーポイントになります。
・睡眠の「質」が健康には最も重要!
睡眠問題は万病のもととなります。特に、質の悪い睡眠(眠りが浅い、短い、中途覚醒が多いなど)では疲れをしっかり取ることができません。さらに、生活習慣病のリスクを高めること、また症状も悪化させることなどが分かってきました。そのため、『質の良い睡眠』、すなわち『快眠』をしっかり取ることで十分な休養を得ることができれば、疲れも解消し、病気に負けない健康な身体を維持することにつながります。
質の良い睡眠(=快眠)を取るための大切なポイントについてまとめます。
・快眠は規則正しい生活から始まります!
睡眠は生活習慣のひとつであり、快眠は規則正しい生活による睡眠習慣によってもたらされます。どれだけ運動やバランスの取れた食事を心がけたとしても、布団に入る時刻が毎日違ってバラバラであれば、快眠を得ることはできません。そのため、規則正しい生活を心がけることが大切になります。
私たちの体の中にある体内時計は、ホルモンの分泌や生理的な活動を調節することで睡眠に備えてくれます。これらは自分の意志ではコントロールすることはできないため、規則正しい生活をおこなうことによってのみ体内時計を整えることができます。体内時計を整えるためにも、規則正しい生活をおすすめします。
・運動と快眠について、運動は習慣化が大事です!
国内外の疫学研究において、運動習慣がある人には不眠が少ないことが分かりました。また、その効果は単独の運動だけでは弱く、習慣的に続けることで強くなることも分かりました。運動を習慣化することで寝付きがよくなり、深い睡眠も得られるようになるため、不眠がちな人には効果が大きいそうです。特に、高齢者では効果が得られやすいとのことです。運動習慣がない方は、特に効果が出やすいと思われます。少しずつでよいので運動を始めましょう。
ただし、激しい運動は負担と興奮をもたらして逆に睡眠を妨げるため、就寝直前の運動は控えてください。効果的な運動のタイミングは就寝の3時間くらい前の夕方から夜であると言われています。なお、運動は負担が小さい有酸素運動(早歩きでの散歩、軽いジョギングなど)を行なうことがポイントです。
・入浴と快眠について 入浴の時間がポイントです!
入浴の睡眠への効果はその加温効果にあります。ただし、午前あるいは午後の早い時間の入浴では睡眠への効果がないため、夕方あるいは夜の入浴をお勧めします。寝付きを良くするためには就寝の2~3時間前の入浴で体温を上昇させることが理想と言われています。寝つきが悪い方はここに気を付けてみるとよいでしょう。ただし、寝る直前の入浴は覚醒効果がありますので、避けるようにしてください。
ここで要注意ポイントがひとつあります。湯温が熱いと身体への負担が大きくなり、効果も薄れるので気を付けてください。体温の上昇が0.5度くらいしかなくても、寝付きへの効果は認められていますので安心してください。0.5度上昇させるには、38度のぬるま湯では25~30分、42度のお湯では5分程度つかる程度でよいそうです。また、半身浴(胸部ではなく腹部までを湯船につけ、40度くらいのお湯で30分ほど少し汗ばむ程度に入浴すること)でも寝付きの効果は認められています。これらのうち、自分の体調や好みにあった入浴方法を選択すればよいでしょう。
・光浴と快眠について 光で体内時計を整えましょう!
ヒトの体内時計の周期は24時間より長いため、体内時計が日々、リセットされないと生活リズムが少しずつ後ろにずれてしまいます。そのため、体内時計を24時間に調節する働きがある光による体内時計のリセットが必要となります。なお、起床直後の光が、最も体内時計のリセットに効果的です。そこで、起きたらまずカーテンを開けて自然の光を部屋の中に取り込むことが体内時計を調節する重要なポイントになります。交代制勤務の方は、定時シフトの際に、朝の光を浴びて体内時計をリセットするようにしてはいかがでしょうか?
ここで、注意すべきは夜の光です。朝の光とは反対に夜の光は体内時計を遅らせる力があり、夜が更けるほどその力は強くなります。また、日光よりも明るさが弱い家庭の照明(照度100~200ルクス程度)でも長時間浴びると体内時計が遅れることが分かっています。なお、体内時計を遅らせる作用が強い白っぽい昼白色の蛍光灯を、赤っぽい暖色系の蛍光灯に交換した方がこの影響は少なくなるそうです。
さて、昼間に明るい光を浴びることによって、夜に分泌されるメラトニンという睡眠を誘導するホルモンが増えるため、昼間には少しの時間でも日に当たるようにすると良いでしょう。なお、5分間の日光浴でも皮膚でのビタミンD産生がうながされるため、その意味でも健康維持に役立ちます。
・その他の習慣と睡眠について
食事はエネルギー源であるため、簡単なもので良いので必ず朝食は取りましょう。エネルギーが足りず、日中の活動が低下すれば夜の睡眠に影響を及ぼします。ただ、就寝に近い時間の夕食や夜食は、体内の消化活動が睡眠を妨げるので出来るだけ控えましょう。食事は寝る数時間前には済ませることが大切です。また、体内時計を整えるためにも規則正しい食事が大切になります。規則正しい食事は規則正しい生活につながり、体内時計が整い、快眠を得られやすくなるからです。
特に多くのカフェインが含まれる飲食物である、コーヒー、緑茶、チョコレートなどは覚醒作用があります。そのため、カフェインに敏感な人は就寝の5~6時間前から控えましょう。また、就寝前の喫煙についてもニコチンによる刺激で寝つきが悪くなる恐れがあるため、やめておきましょう。なお、アルコールは寝付きをよくしますが、明け方の睡眠を妨げるため、避けた方が良いでしょう。
身体をすっきりさせる効果がある昼寝ですが、寝過ぎは快眠を妨げますので、15分程度の長さが望ましいです。ただ、高齢者では30分程度の昼寝で夕方のうたた寝が減少し、夜によく眠れるようになるそうです。夕方にうたた寝をしてしまう高齢の方は、昼食後の昼寝をぜひ試してみてください。
・快眠のためのテクニック -寝具の条件と寝相、寝返りとの関係について
快眠の必須条件は、睡眠をとりまく環境を整えることにあります。そのため、寝具選びはよく眠るための重要なポイントになります。枕は首や肩に無理のない高さや硬さのものを、ベッドマットや敷き布団は適度な硬さのものを、掛け布団はフィット感のあるものを選択すれば、体への負担が少ない寝姿勢(寝相)を保つことができ、快眠につながります。また、保温性と吸湿性、放湿性が良い寝具を選ぶことも快眠の重要なポイントとなります。
個人差や季節によっても異なりますが、寝床内の温度は33℃、湿度は50%の状態が最適とされるそうなので、このような条件になるように寝具や服装を選ぶことが大事です。寝具選びのポイントを解説します。
1. 快眠できる高さの「枕」を選びましょう
枕の高さは、マットや敷き布団に対して首の角度が約5度になるのものが理想的といわれています。また、頸部のすき間(首の後ろのあたり)の深さは個人差がありますが(一般に1-6cm程度)、この深さに合う形状の枕を選ぶと首や肩への負担が少なくなり眠りやすくなるそうです。
頸部のすき間の深さに合わない枕(高すぎるもの、低すぎるもの)を選ぶと、首や肩、胸の筋肉に負担がかかり、呼吸がしにくくなるため、選ぶ際にはここに注意が必要です。
2.「ベッドマット・敷き布団」は適度な硬さが大切
人の姿勢は、背骨が『後頭部から首や胸にかけて』と『胸から腰にかけて』の2か所でS字カーブを描きます。立ち姿勢のときの腰部のS字カーブのすき間は4-6cm程度ですが、寝た姿勢では体への負担がいちばん少ないのは、2~3cm程度のすき間になっているときです。この腰部のすき間を保持できる寝具を選ぶことが大切です。
ベッドマットや敷き布団が柔らかすぎる場合には、腰部と胸部が深く沈みこむためS字カーブのすき間が大きくなります。そのため、寝返りがしにくくなり、腰痛の原因にもなります。逆に硬すぎると痛みが生じたり、血流が妨げられたりすることで寝返りの回数が増え、熟睡できなくなります。つまり、ベッドマットや敷き布団には適度な硬さが必要でとなります。そして、前述したとおり、2か所のS字カーブをバランス良く支え、快適な寝相を保ちやすいものを選ぶことが重要なポイントになります。首部のS字カーブについては、枕の高さや形状が大切な要素となります、こちらは1でお伝えした通りです。敷き布団は難しいと思われますが、ベッドマットの購入前には、是非とも寝心地を試させてもらいましょう。
3. 「掛け布団」には、保温性、吸放湿性、だけでなくフィット感も大切
睡眠中は体からは熱が奪われやすいため、過剰な放熱による低体温状態を防ぐことが必要です。特に、腹部が冷えることは様々な身体の不調につながります。また、寝ている間にはかなりの汗をかくため、汗を吸収して透過させる吸湿性および放湿性がある素材の掛け布団を選ぶことが快眠のためには重要なポイントです。そして、睡眠中に寝返りしやすいように軽くて体にフィットするものがよいでしょう。重くゴワゴワするものは避けましょう。
以上、睡眠と健康の関係について、睡眠障害や睡眠不足のリスクと快眠を得るために気を付けたいポイントについてまとめました。
質の良い睡眠(=快眠)には、規則正しい生活、運動、朝日を浴びる、適切な寝具選び、などが大切であることをお伝えしました。自分に合った方法を試し、睡眠問題を改善することで、睡眠不足などによる事故や病気にかかるリスクを減らしましょう。
健康で長生きするために、生活習慣や寝具選びにも関心をもっていただければ幸いです。
参考情報