「寝ている時に足がしびれる…」
「足のしびれをとりあえずおさめる方法はあるのだろうか?」
「坐骨神経痛をやわらげるにはどんな寝方がいいんだろう?」
このようなお悩みはありませんか?
足腰に関するお悩みは、国民のうち8割が経験したことがあるといわれています。睡眠の時の坐骨神経痛については、お悩みの方が多い症状ですが、複数の原因があるため、対処が難しいと考える方も多いでしょう。
この記事では、睡眠の時の坐骨神経痛がおこる原因から対処法まで、体系的に解説しています。痛みを軽減する方法を見つけて、ぜひ実践してみてください。
1. 坐骨神経痛の原因
まず、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)とは、正式な病名ではありません。
お尻からももの裏側を通り、足先まで伸びている「坐骨神経」に、痛みやしびれが起こる症状を総称して、「坐骨神経痛」と呼ばれています。
では、正式な病名はなんというのでしょうか?
実は、坐骨神経痛には人それぞれの原因があり、代表的な原因は、「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」と、「腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア」の2つです。
このような、原因となっている疾患名が、正式な病名となります。
①腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)は、40代以降の中高年の方に、心当たりのある方が多いのではないでしょうか。
「脊柱(せきちゅう)」とは背骨のことで、脊柱を上からみると「脊柱管」とよばれる空洞があります。中高年は骨密度が低下していることが多いため、骨が変形しやすくなっており、変形によって脊柱管が狭くなる症状が「腰部脊柱管狭窄症」です。
②腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアは、20歳代に最も多く、次に30歳代から40歳代に多くみられます。
「若いのになぜ坐骨神経痛があるのだろう?」と疑問に思っていた方は、腰椎椎間板ヘルニアが当てはまるかもしれません。これは、椎間板の中心にある「髄核(ずいかく)」という組織の一部がはみ出し、「馬尾(ばび)神経」を圧迫して、痛みやしびれを感じる仕組みです。
③そのほかの病気
坐骨神経痛を感じて医療機関を受診すると、そのほとんどが「腰部脊柱管狭窄症」もしくは「腰椎椎間板ヘルニア」と診断されることが多いです。
しかし、中には、そのほかの病気が原因で、坐骨神経痛と似たような症状を発症している場合もあります。婦人科系の病気や、筋肉や血管の病気であったり、子宮がん、前立腺がんといった病気が隠れている場合もあるため、早めに受診して病名を特定するようにしてください。
2. 睡眠の時の坐骨神経痛の症状
睡眠の時の寝姿勢として、仰向け寝、横向き寝、うつ伏せ寝などがありますが、坐骨神経痛の原因となっている病気の種類によって、どのような姿勢で寝ると痛みが増すかは異なります。
①腰部脊柱管狭窄症が原因のケース
腰部脊柱管狭窄症の場合は、背中を後ろに反らせることで脊柱管が狭くなり、神経への圧迫が強くなることで、痛みが増します。仰向けに寝ると背中が反ることが多いため、腰から足にかけて、痛みやしびれを感じるでしょう。
②腰椎椎間板ヘルニアが原因のケース
腰椎椎間板ヘルニアの場合は、前かがみになることで髄核がはみ出し、神経を圧迫して痛みを感じる仕組みのため、横向きで背中を丸くして寝ることで、痛みが増す場合が多いでしょう。
③混合型のケース
腰部脊柱管狭窄症と腰椎椎間板ヘルニアを同時に発症している場合、背中を反らせても、丸めても、痛むことになります。この場合は、睡眠だけでなく、歩く、座るといった動作がつらくなってしまい、日常生活に支障をきたしてしまいますね。
3. 坐骨神経痛が軽減される寝方
坐骨神経痛を少しでもやわらげるために症状別のおすすめの寝方を紹介します。クッションを使用した寝方も紹介しますが、クッションを持っていない場合は、座布団や、バスタオルを丸めたものなどで代用するようにしてください。
①腰部脊柱管狭窄症が原因のケース
腰部脊柱管狭窄症が原因で坐骨神経痛がある場合は、横向きで寝ると楽に感じる人が多いです。横向きに寝て、股関節とひざを曲げ、さらに足の間にクッションをはさむことで、腰への負担が軽くなります。
また、枕は通常より高さがあるものを使用するとよいでしょう。
起き上がるときは、横向きのままひざを曲げて、上体を手で支えながら起き上がるようにしてください。
②腰椎椎間板ヘルニアが原因のケース
腰椎椎間板ヘルニアが原因で坐骨神経痛がある場合は、仰向けで寝ると腰への負担を小さくすることができます。仰向けに寝て、腰の下と、ひざの下にクッションを入れて身体を支えてあげると、より楽に感じるでしょう。
起き上がるとき、仰向けのまま起き上がろうとすると、ぎっくり腰などの腰痛の原因になります。必ず横向きになってから、ひざを曲げ、手で上体を支えながら起き上がってください。
4. 睡眠の時の坐骨神経痛の対処法
坐骨神経痛が気になる場合、どのような病気が隠れているかわからないため、なるべく医療機関を受診することが大切です。
ただし、すぐに受診ができず、「睡眠の時の坐骨神経痛がつらく、今すぐ対処をしたい!」という場合もあるでしょう。そのような場合にとることができる応急処置としては、アイシングをする、シップを貼る、痛み止めの薬を飲む、といった方法があります。
①アイシング
炎症を起こして痛みが出ている部位に対して、タオルでくるんだ保冷剤や、保冷まくらなどを1〜2分間あてて、アイシングをすることで、痛みがおさまる場合があります。
②シップ
冷たいシップを貼ると、患部に冷感を与えることで痛みがおさえられる場合があります。
また、温かいシップは慢性的な痛みに対して効果がある場合が多いです。
③痛み止めの薬
腰痛に対して使われる痛み止めの市販薬として一般的なのが、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる鎮痛剤で、「イブプロフェン」や「ロキソプロフェン」などの種類があります。また、NSAIDsより効果は劣りますが、「アセトアミノフェン」が配合されているものも、痛み止めとして有効です。
また、即効性を求めておらず、じっくりと痛みを改善していきたい、という場合は、漢方薬やビタミン剤も選択肢となるでしょう。
痛み改善に効果的な漢方としては、
- 疎経活血湯(そけいかっけつとう)
- 桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
- 牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
などがあります。
ビタミン剤は、特にB12が含まれているものは、しびれと痛みの改善に使われることが多いです。
5. 日常生活で坐骨神経痛を緩和する方法
坐骨神経痛を軽減するための寝方や、応急処置となる対策について紹介してきましたが、より長期的な目線で、根本的な対策にも取り組むことが大切です。たとえ、治療で腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアを改善したとしても、再発の恐れがあります。坐骨神経痛を緩和し、再発を防ぐためには、まず日常生活で正しい姿勢を意識し、筋トレやストレッチを取り入れてみましょう。
①正しい立ち姿勢
立っているときは、背骨が自然なS字カーブを描く姿勢を保つようにしましょう。以下の点を意識すると、正しい姿勢を保ちやすくなります。
- 軽くあごを引く
- 背筋を伸ばす
- お腹をひっこめる
- ひざを伸ばす
ただし、腰部脊柱管狭窄症が原因の場合は、あまり背中を反らせると神経を圧迫し症状が悪化するため、少し前かがみの姿勢が安全です。強い痛みやしびれが改善されたら、徐々に正しい姿勢を意識するようにしてください。
②正しい歩き方
歩くときは、まず先ほどの正しい姿勢で立ち、以下の点を意識して歩くと、腰への負担を減らすことができます。
- まっすぐ前を見る
- ひざを伸ばしたまま、重心を前方に移動することで、自然と前足を踏み出す
- 踏み出した足は、かかとから着地する
- 後ろの足は、親指が最後に地面から離れる
- 胸や肩が反りすぎないよう注意する
ただし、立ち姿勢と同様に、腰部脊柱管狭窄症が原因の場合は、少し前かがみの姿勢のほうが楽に歩くことができます。
③正しい座り方
椅子に座るときに腰への負担を減らすには、以下の点を意識してください。
- 腰を曲げてから、ゆっくりと、椅子に深く座る
- 背筋を伸ばす
- お腹を軽くひっこめる
また、畳や床などに直接座るときは、正座が最も腰に負担がかかりません。横座りやあぐらは、坐骨神経痛を悪化させてしまう座り方です。
④筋トレ
筋肉が減少すると、重力の負荷に対抗できなくなるため、骨格のバランスが悪くなり、坐骨神経痛が起こりやすくなります。日常の動作をスムーズに行うためには、重力の負荷に対抗するための筋肉が必要です。坐骨神経痛の改善のためにおすすめの筋トレには、以下の5つの方法があります。
<1. お尻の引き締め>
- 壁に背中、お尻、かかとをつけて、まっすぐ立つ。
- 壁に肩を押し付けるようにして胸を張り、お腹をへこませた状態で、肛門を締めるように力を入れ、10秒間キープする。
<2. うつ伏せ足上げ>
- うつ伏せに寝て、足を伸ばす。
- 片方の足を上げて、お尻と太ももの境目の筋肉に力を入れた状態で、10秒間キープする。
- 反対の足もくりかえす。
<3. 肛門締め>
- 両足のかかとをつけ、つま先を90度に開いて、まっすぐ立つ。
- 両手を軽く広げ、左右の肩甲骨を真ん中に寄せながら、肛門に力を入れた状態で、10秒間キープする。
<4. スクワット>
- 両足のかかとをつけ、つま先を90度に開いて、まっすぐ立つ。
- 両手を太ももの上に置き、両ひざをくっつけたまま、ゆっくりとひざを曲げて、お尻を後ろに突き出す。
- ひざがつま先よりも前に出ないように意識しながら、10秒間キープする。
<5. つま先立ち>
- 背伸びをするようにかかとを上げ、まっすぐ立つ。
- 肛門に力を入れて締め、つま先立ちの姿勢を10秒間キープする。
⑤ストレッチ
ストレッチをすることで、血行を促進して痛みを和らげる効果が期待できます。坐骨神経痛の原因となっている病気によって、適切なストレッチが異なるため、自分に合ったストレッチ方法を見つけてみてください。
まず腰部脊柱管狭窄症が原因の場合は、以下のようなストレッチが効果的です。
- 椅子に浅く座り、片方のひざを抱えて胸に抱きよせる
- 足を肩幅くらいに広げ、背筋を真っ直ぐ伸ばしたまま、お尻を床に向かって10cmくらい落とす動作をくりかえす
次に腰椎椎間板ヘルニアが原因の場合は、以下のようなストレッチが効果的です。
- うつ伏せの状態から両手で上体を支えながら起こし、数秒間腰を反らせる
- 正座で座り、お尻を足の裏につけたまま、両腕を前に伸ばす
ぜひ試してみてください。
6. まとめ
睡眠の時の坐骨神経痛が気になる方に向けて、対処法や、痛みを軽減する寝方をご紹介しました。
応急処置をしたい場合は、アイシングをする、シップを貼る、そして痛み止めの薬を飲む、といった方法があります。しかし、根本的に改善したい場合は、日常生活で正しい姿勢を意識したり、簡単な筋トレから取り組むことが重要です。
また、寝るときは、腰部脊柱管狭窄症が原因の場合は横向き寝、腰椎椎間板ヘルニアが原因の場合は仰向き寝をすると、腰への負担を減らすことができるでしょう。
ぜひ、ご自身にできるものから取り入れて、坐骨神経痛を改善して、快適な毎日を過ごせるようになることをお祈りします。