毎日しっかり睡眠時間を確保しているにもかかわらず、日中に眠気が襲ってくることはありませんか?そんな時は無理せず、20分程度眠る「パワーナップ」を取り入れた方がいいかもしれません。パワーナップの効果は数々の研究で実証されており、大手企業も積極的に取り入れています。
今回はパワーナップを取り入れることで得られるメリットや効果的な実践方法、注意点などを解説していきます。
日中の仕事や作業の効率をあげたい方は、ぜひ今回の記事を参考に、パワーナップを取り入れてみてください。
パワーナップ(積極的仮眠)とは
パワーナップとは、昼過ぎから15時あたりまでの時間に15分〜20分程度の短時間眠る、いわゆる「仮眠」のことを指します。「積極的仮眠」ともよばれます。
これは社会心理学者ジェームス・マース氏が提唱し、のちにさまざまな研究結果による効果があると実証されてきたことから、一般的に広まってきました。また、大企業が続々と導入し始めたことで、話題にもなっています。
少し前までは、仕事中に仮眠をとる=サボっていると捉えられがちでしたが、その常識は着々と変化し、「効率化のためには必要な制度」として認知され始めています。
疲労回復のメカニズム
パワーナップで、疲労回復が見込めるとされています。そのメカニズムは、入眠してから約20分後に訪れる「ノンレム睡眠のステージ2」にあります。このステージに入ることで脳内に蓄積された疲労がクリアされ、起きた時に心身ともにスッキリした状態になります。
この現象は「キャッシュメモリ」とも呼ばれ、パソコンの動きが悪くなった時にキャッシュをクリアすると動きが速くなるように、脳も同様の現象が起こると言われています。
パワーナップ(積極的仮眠)のメリット
パワーナップのメリットはさまざまな研究や実験で実証されています。ここではメリットを4つ紹介します。
脳と身体の疲れが取れる
パワーナップで得られる1番のメリットは脳と身体の疲れがリフレッシュできる点です。
先述の通り、脳に溜まった疲労を回復できるため、判断力、理解力、集中力など、仕事に必要な力が回復できます。
その前まではいくら悩んでも解決できなかった問題が、パワーナップ後にするっと解決策が見つかった、なんてことも少なくありません。
また、脳の柔軟性も上がるため、自由な発想が生まれやすい状態になります。いつもと違った視点から企画が生み出せるかもしれませんよ。
精神力が回復する
パワーナップから得られるメリットは脳と身体の回復だけではありません。眠気がスッキリすることで精神力も回復できることがわかっています。
また、ストレス軽減といった「マイナスを0にする」作用と、やる気をUPさせる「0を1にする」作用が期待できます。
日々の仕事にやる気を持って取り組めない、と悩んでいる方は、積極的にパワーナップを取り入れてみましょう。
認知症予防が期待できる
パワーナップを取り入れることで、認知症予防にも効果があると、さまざまな研究結果からわかってきています。30分未満の昼寝を続けることで、認知症の発症率が1/7まで下がったと言います。(引用:2000年発表 国立精神・神経医療研究センター「昼寝の習慣と認知症発生リスク」)
パワーナップ(積極的仮眠)の効果的な実践方法
たくさんのメリットがあるパワーナップ。より効果的に取り入れるためにはどうしたら良いでしょうか。ここでは、パワーナップを効果的にとるための実践方法を紹介します。
パワーナップの効果を発揮する時間を意識する
パワーナップの肝は「深い眠りに入る前の入眠後20分間眠りにつく」ことです。浅い眠りのまま目覚めることで脳もスッキリした状態で起きられますが、20分以上だと眠りが深くなってしまうため、目覚めても眠気が取れないことも。午後の仕事効率を上げるためにパワーナップを取り入れているにもかかわらず、逆効果になってしまっては元も子もありません。タイマーをセットして、20分前後で起きられるように工夫しましょう。
また、パワーナップを取り入れる時間帯も意識するところです。眠気のピークは午後2時〜4時と言われているため、その前のタイミングで仮眠を取るのがベスト。4時以降は夜の睡眠に支障を来すため控えた方が良いでしょう。
完全に眠らなくてもOK
仮眠をとる習慣がなかった人がいきなりパワーナップを習慣化しようと思っても、なかなか眠れない方もいると思います。パワーナップをとるんだからしっかり眠らなきゃ!と思う方もいるかもしれませんが、無理に眠らなくてもOK。目を閉じて自分の呼吸に意識を向けるだけでも十分に効果があります。人間の五感から感じる情報の8割は視覚からと言われているため、目を閉じるだけでも脳を休ませることができます。
起きたら軽くストレッチする
目が覚めたら素早くスイッチを入れるために、軽い運動やストレッチを取り入れましょう。起きた直後は血圧が下がっていますが、軽く部屋の中を歩き回るだけで血流がよくなり、脳と体が活性化します。また、光を浴びると目がよく覚めますので、状況が許せば外を歩くのも良いでしょう。
パワーナップの前にカフェインを取る
コーヒーは目覚めた後の眠気覚ましに飲むもの、というイメージがありますが、実はパワーナップの前に飲むと、起きた後の目覚めが良くなる効果があります。
カフェインは飲んでから体に吸収されるまで時間差があり、覚醒作用を感じるまで約30分後と言われています。パワーナップも30分間程度が最適と言われているので、眠る前に飲めば、ちょうど覚醒作用が働き、午後の眠気をしっかり取ってくれます。
休日はホリデーナップもおすすめ
パワーナップは平日にとるのが一般的ですが、寝不足が続いている場合は休日の昼間に長めの仮眠をとる「ホリデーナップ」もおすすめです。仮眠時間は、一度眠りが深くなった後に浅くなるタイミングである90分を目安にしましょう。時間帯もパワーナップと同じく、午後4時までには終わらせられるとベストです。
パワーナップ(積極的仮眠)の注意点
パワーナップをとる際には注意点もあります。注意するべきポイントをしっかり抑えて、効果的に仮眠をとりましょう。
寝る姿勢も大事
横になると深い眠りに落ちやすいので、椅子に座ったままパワーナップをとることがおすすめです。机にうつ伏せになったり、背もたれにもたれかかるような状態でも良いでしょう。リクライニングチェアであれば、完全に横にするのではなく120°ほどの角度がおすすめです。
眠る時に椅子が固かったり、背もたれが低かったりするとうまく眠れないこともあるため、椅子が不向きと感じたら、これを気にパワーナップに最適な椅子に買い換えることもよいかもしれません。
睡眠中の光はシャットダウンする
睡眠中に光があたると、うまく入眠できないこともあります。パワーナップをとる時は窓からの光を遮断したり、アイマスクをするなど、光をしっかりシャットダウンしましょう。
無理のないスケジュールで取り入れる
毎日パワーナップを取り入れることが理想ですが、仕事が忙しかったり、ルーティン化できていない内は毎日の実践が難しい場合もあります。パワーナップはあくまでも仕事効率をアップするためのプラスアルファな習慣であるため、無理に実践しなくてもOK。まずは週3回程度を目標に取り入れてみましょう。
また、一度に20分間の時間を確保が難しい方は、移動中や仕事の合間の1、2分でもいいので、目を閉じて休憩することがおすすめです。少しでも目を閉じて、視覚の情報をシャットダウンできれば、脳は休息できリフレッシュできます。
パワーナップ(積極的仮眠)の導入事例
実際にパワーナップを導入している企業はどのように取り入れているのでしょうか?ここでは積極的にパワーナップを導入している企業を3社紹介します。
GMO
GMOは2012年ごろから本格的にパワーナップを導入。仮眠スペースがあり、ヨーロッパの呼び方が由来である「GMOシエスタ」を常設しています。
また、昼休み中に使用していない会議室を使うことで、スペースの有効活用を実現しています。ピーク時は全体の8割のベッドが埋まるそうです。
マッサージスペースもあり、30分間であれば無料で利用できるそうです。パソコンワークで凝り固まった体を、勤務中にケアできる制度はありがたいですよね。
Speee
マーケティングやHRなど幅広い事業を展開している株式会社Speeeも、パワーナップを取り入れたことで有名な企業です。
ここはパワーナップのスペースを「集中スペース」と呼んでおり、仮眠スペースの他にも机や卓上スタンドがあり作業もできるスペースとなっています。本格導入は2012年で、30人〜50人規模の時から導入しているそうです。
フェイスブック ジャパン社
他企業のように制度や専用スペースはありませんが、パワーナップをいつでもどこでもとってもOKな制度となっています。オフィスにはリラックスできるスペースがたくさんあるので、くつろぎながら仕事もできますし、そのままパワーナップにはいる人も多いそうです。
ゲームコーナーなども置いてあり、気分転換するにはもってこいの環境となっています。
三菱地所
2016年ごろから取り組みをはじめ、2018年に仮眠室常設、制度もスタートしています。また、独自でパワーナップに関しての実験やアンケートを行っており、成果に基づいた環境づくりを行っています。
仮眠室には体全体を包み込んでくれる大きなリクライニングソファがあり、パワーナップ中ぐっすり眠れる環境となっています。
引用:三菱地所が導入した仮眠制度。15分から30分の仮眠はこんなに集中力が回復する
OKUTA
リフォーム業や不動産仲介業を営む株式会社OKUTAも、パワーナップを積極的に取り入れている企業です。制度の特徴は、パワーナップを強制するのではなく、「権利」として社員に与えている点です。自分が眠いと感じるタイミングでパワーナップを取れるのは、自由度が高い上、企業が取り入れやすそうな制度と言えます。
引用:仮眠で生産性向上!3社の取材から見えたパワーナップの取り組みと効果を徹底紹介
パワーナップ(積極的仮眠)のおともにおすすめアイテム
オフィスや自宅でパワーナップを取り入れる際に、より快適に過ごせるアイテムがあればパワーナップの効果も高まります。ここではパワーナップのおともにおすすめしたいアイテムを紹介していきます。
うつぶせ枕
パワーナップは座ったまま眠る方がいいとされています。机にうつ伏せになるような体制ならば、腕が痺れないようにうつ伏せ用の枕があると便利です。ポイントは顔をすっぽり入れられるような穴が空いていて、腕も通せるような形状であると良いでしょう。
アイマスク
パワーナップでは光をしっかり遮断することがポイントです。目が潰れないような立体的な形状かつ、締め付け感がないものを選ぶとベスト。USB充電型式で温かくなるホットアイマスクもおすすめです。
耳栓
雑音を遮断して、睡眠の妨げにならないようにする工夫も大切です。耳栓は使い捨てのものとそうでないものがありますが、毎日の習慣にするならば使い捨てを常備しておくのがおすすめです。
また、購入時に遮音性の数値が優れているかしっかりチェックすることもポイント。睡眠用の耳栓ならばラベルやパッケージに記載がありますので、注意してチェックしましょう。
リクライニングチェア
在宅勤務の方で金銭的に余裕がある方は、リクライニングチェアの購入も検討してみてはいかがでしょうか。購入時は、可動域が仮眠するのに最適か、背もたれや、アームレストなど、身体を支えるパーツがしっかり揃っているかなどを確認しましょう。
オフィスチェアでも良いですが、長時間座るのに適した作りとなっているゲーミングチェアもおすすめです。
まとめ
パワーナップとは、昼過ぎから15時の間にとる「仮眠」のことをいいます。パワーナップを習慣化することで、脳や身体、精神的な疲労がクリアになり、午後の仕事効率が上がるとされています。また認知症予防に効果があることも研究により実証されています。
パワーナップの注意点としては20分以上の睡眠は避けることと、完全に横になるのではなく、座ったまま眠ることです。
大手企業も続々と取り入れているパワーナップ。できる範囲から日常的に取り入れてみてください。