睡眠ノウハウ

社会人の睡眠時間はどれくらい?男女別の平均から寝不足の弊害まで解説

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日本人は睡眠に不安を抱えている人が多いようです。とくに働き盛りの40代、50代は性別を問わず睡眠時間が不足しがちと言われています。

実際に日本人は、どれくらいの時間を睡眠にあてているのでしょうか。今回は、社会人の睡眠時間がどれくらいであるかを調べるとともに、寝不足が引き起こす弊害についても解説していきます。睡眠不足の解消法も紹介いたします。

この記事の監修者
睡眠健康指導士、建築物環境衛生管理技術者
佐々木崇志
東北大学大学院薬学研究科修了。修士(薬科学)、建築物環境衛生管理技術者。 修了後は臨床研修指定病院で医局秘書や学生担当として全国の医療を志す学生や医療従事者と携る。勤務していく中で睡眠に関する訴えが医療従事者にも多い事に気づき、自身も医療従事者や患者の助けにならないかと考えるようになり個人で活動を始める。現在は東北を活動の拠点として睡眠(体内時計・時計遺伝子)の研究の経験、資格の知識を生かしながら睡眠啓蒙活動を行なっている。

日本人の睡眠時間の平均

睡眠1

NHK放送文化研究所では視聴者の意見を放送に反映させるため、定期的に様々な科学的調査を行っていますが、2020年の調査では睡眠時間についての調査を行っています。

それによると、日本人全体での平均睡眠時間は7時間12分ということが判明しました。男女別にみると、男性の平均睡眠時間は7時間20分、女性は7時間6分です。さらに年齢別で見ていくと、男性で睡眠時間が一番短い年代は50代の6時間54分、次いで40代の6時間58分でした。

睡眠時間男女別

出典:NHK放送文化研究所 世論調査部 睡眠 2020年調査 睡眠時間(男女年層別 平日)

女性の場合は50代で6時間36分、40代の6時間53分と、同年代の男性よりもさらに短くなっています。40代50代の女性は、夜11時台に就寝している割合が最も少ない反面、朝6時以前に起床している割合が最も多いという結果が出ています。

睡眠時間男女別2

出典:NHK放送文化研究所 世論調査部 睡眠 2020年調査 睡眠時間 朝6時に寝ている人の割合(男女年層別 平日)

睡眠時間男女別3

出典:NHK放送文化研究所 世論調査部 睡眠 2020年調査 睡眠時間 夜11時に寝ている人の割合(男女年層別 平日)

日本の女性は家事、育児、仕事など、いくつもの役割を持っているため、どうしても睡眠時間が短くなる傾向があります。

コロナ禍で睡眠平均時間に変化が?

コロナ

しかし、2020年1月から、日本でもコロナウイルス感染者が次々と報告され、生活様式がガラリと変わりました。外出が制限され、大掛かりなイベントはほとんど中止になったばかりでなく、通勤時の混雑を避けるため、リモートワークを取り入れる企業も増えてきました。睡眠時間にも少なからず影響があったようです。

ビデオリサーチの調査によると、2022年6月時点の東京では、睡眠時間の平均は男性が7時間50分、女性が7時間58分となり、全体ではコロナ流行以前の2019年より睡眠時間が12分ほど増えています

睡眠時間変化1

出典:ビデオリサーチ 生活時間の変化

また、女性の睡眠時間が男性の睡眠時間を上回るという逆転現象も起きています。とくに50代以上の女性の睡眠時間は23分も増えています。コロナ禍により定着した新しい生活様式は、よく寝る習慣が根付きつつあるようです。

睡眠時間変化2

出典:ビデオリサーチ 睡眠時間量の推移

睡眠の質と時間の関係とは?

睡眠2

「スタンフォード式 最高の睡眠」の著者であり、株式会社ブレインスリープ創業者兼最高研究顧問でもある西野精治博士によると、近年は睡眠時間が伸びているだけでなく、睡眠負債も減少傾向にあるということです。コロナウイルスの流行により、病気の予防や健康への意識が高まり、睡眠に注意を払う人は確実に増えてきています。

ブレインスリープは、睡眠の実態を把握するために、独自の調査法「睡眠偏差値」を取り入れていますが、2022年の調査では睡眠の意識が上がった人は、睡眠意識が下がった人よりも睡眠偏差値が3.8ポイント高くなったということです。

興味深いのは、睡眠の意識が上がった人は下がった人よりも睡眠時間が7分ほど短くなっていたことです。これは、睡眠の意識が上がった人は睡眠の環境を整えたり、睡眠の質を下げる行動を控えるようになったりしたため、睡眠の質が向上したことが原因と考えられます。

ショートスリーパーが増えた?

ショートスリーパーは、睡眠時間が4時間以下でも眠気を感じることなく、仕事や勉強など日中の活動を支障なくこなせる人のことです。ショートスリーパーは特殊な遺伝子によって短時間睡眠でも健康が保てますが、この遺伝子を持っている人はめったにいません。

それにもかかわらず、ブレインスリープの調査ではショートスリーパーを自認する人が全体の23%にも及ぶという結果が出ました。しかし、自称ショートスリーパーの睡眠時間、睡眠偏差値を見てみると、睡眠時間は実際のショートスリーパーよりも2時間ほど長く、睡眠偏差値は非ショートスリーパーよりも低いという結果になりました。

実際にはショートスリーパーと思い込んでいるだけにすぎず、無理に起きている人も多くいるようです。健康への悪影響が心配されます。

睡眠不足が続くとどんな弊害が起こる?

睡眠不足

睡眠には「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」2つのサイクルがあり、90分~120分の間隔でノンレム睡眠とレム睡眠が繰り返されています。睡眠は、最初は深いノンレム睡眠から始まり、起床直前は浅い眠りのレム睡眠の状態になっていることが理想です。

このサイクルが理想的に巡るには、7時間~8時間が必要と言われています。睡眠が6時間以下になると、徐々に睡眠負債が溜まり、心身に悪影響を及ぼします

睡眠負債の怖さとは

睡眠負債とは、睡眠不足が少しずつ蓄積されることを借金にたとえたものです。たとえ少しずつでも睡眠負債が溜まっていくと、日中でも強い眠気を感じるようになり、仕事や勉強など日中の活動に重大な支障をきたすようになります。

睡眠負債は脳機能に深刻なダメージを与える

人の脳は、半分近くを前頭葉が占めています。前頭葉はヒトの知能や感情、言語、手足の動きなどを司り、ヒトの人格の大半を占める部分といっても過言ではありません。睡眠負債が溜まると前頭葉が深刻なダメージを受け、集中力や判断力が鈍くなり、ケアレスミスを起こしやすくなります

また、前頭葉がダメージを受けることで仕事や勉強に対する意欲が低下し、感情の抑制が効かなくなるため、仕事の生産性が極端に下がったり、勉強したことが頭に入らず成績が低下したりすることで精神的なダメージを受けることになり、うつ病など精神的な病を引き起こす可能性も出てきます

睡眠不足は様々な病気の原因になる

睡眠不足は免疫力の低下につながることもわかっています。睡眠時間と女性の免疫機能についての研究結果では、睡眠不足の女性は、充分に睡眠をとっている女性に比べ風邪から肺炎に悪化するリスクが1.4倍になると報告されています。

生活習慣病も発症しやすくなる

睡眠不足になると、高血圧や糖尿病などの生活習慣病も発症しやすくなります

睡眠時間が短い、眠りが浅いなど睡眠の質が悪い人は、交感神経が優位になる時間が長くなります。これは同時に血圧が高い状態も長く続くことになり、高血圧が常態化するためです。

また、睡眠不足が続くと血糖値をコントロールするホルモン、インスリンの働きが悪くなり、糖尿病を発症するリスクも高くなります。

睡眠不足は肥満につながる

食欲にはレプチンとグレリンという2つのホルモンが関係しています。レプチンは食欲を抑える働きがあります。グレリンはその逆で、食欲を増進させる働きを持つホルモンです。

睡眠時間が8時間前後の人、6時間の人、5時間の人の肥満率を調べたところ、睡眠時間が8時間前後の人に比べ、睡眠時間6時間では23%、5時間では50%もの人が肥満ぎみだったことが報告されています。

睡眠時間が短いと、食欲を抑えるホルモンが減少する一方で、食欲を増進させるグレリンは増えるが確認されています。深夜に何か食べたくなってしまうのは、グレリンが増加しているためです。また、睡眠不足になると、甘いものや炭水化物、塩気のあるものが食べたくなることもあり、余計に太りやすくなります。

睡眠不足は美容の大敵

英国皮膚科医会は、2014年に女性のお肌と睡眠時間に関する興味深い研究を行っています。

60人の女性を睡眠時間7時間~9時間と、5時間以下の2つのグループに分け、皮膚の老化について調べたところ、睡眠時間が7時間~9時間のグループは肌の老化率が低く、肌のバリア回復力も高いことが判明しました。

一方で、睡眠時間が5時間以下の女性は肌の水分保水力が低く、バリア回復力も睡眠時間7時間~9時間の女性に比べ低い傾向が見られました。

この実験では、外見に関するアンケートも行われていますが、充分に睡眠がとれている女性ととれていない女性では、充分に睡眠のとれている女性のほうが自分の外見に関して満足している傾向が高いこともわかりました。

睡眠不足はお肌の大敵であるばかりでなく、自己肯定感や幸福度も下げてしまうようです。

睡眠不足は認知症を発症する危険性も

睡眠不足はアルツハイマー病など、認知症を引き起こすリスクも高くなることも報告されています。

京都大と筑波大が行ったマウスを使った実験によると、レム睡眠中に脳内の血流が活発になり、物質交換がさかんに行われていることが判明しました。このことから、レム睡眠が減少すると脳内の物質交換がスムーズに行われなくなり、老廃物が脳内に残留してしまうため、脳機能の低下が進んでしまう可能性が高いことがわかったのです。

睡眠不足を解消するためにできることとは

解決する

寝不足は百害あって一利なしということが分かりました。睡眠時間が思うようにとれない、眠りが浅い場合は、少しでも睡眠の質を改善する必要があります。できることから少しずつ改善していきましょう。

就寝時間、起床時間を一定にする

平日はゆっくり寝てられないので、休みの日ぐらいは寝だめしたい…。という気持ちはわかりますが、休日だからと言って昼過ぎまで寝ていると、睡眠のリズムが崩れて、仕事が始まる平日の朝に起きづらくなったり、昼間に強い眠気を感じたりして、よけいに悪循環に陥ってしまいます。休日もできるだけ平日と同じ時間に起床、就寝するほうが質のよい睡眠がとれます

休日の昼間、どうしても眠い場合は1時間ほど昼寝をして乗り切りましょう。夕方近くに何時間も寝てしまうと、やはり睡眠のリズムが崩れてしまうので、午後2時くらいまでが目安です

食生活の改善

朝食を抜くと脳に栄養が送られず、しっかりと目覚めることができません。最低でもコーヒーに砂糖とミルクを入れて飲むくらいは必要です。また、栄養不足になると、深い睡眠をとることができません。食事の栄養バランスにも気を配りましょう

寝る直前の飲食はNG

食事が満足にとれないからといって、就寝直前に食べてしまうと、胃の内容物の消化が優先され、深い睡眠がとれません。食事は寝る2~3時間前にはすませるようにしましょう

また、コーヒーやチョコレートなどカフェインを含むものを寝る直前に口にするのはNGです。眠気は、疲労物質アデノシンがアデノシン受容体と結合して覚醒物質であるヒスタミンの分泌が抑えられることで発生します。

しかし、カフェインはアデノシンと受容体の結合を阻むため、ヒスタミンの量が抑えられなくなり眠れなくなってしまいます。カフェインは、午後2時以降の摂取は控えましょう。

質の良い睡眠をとるためには、寝酒もNGです。アルコールはドーパミンやアドレナリンを減少させる働きがあり、寝つきはよくなります。しかし、睡眠中にアルコールを分解する過程で、アセトアルデヒドという物質が出てきます。アセトアルデヒドは交感神経を刺激するため、睡眠中に目が覚める原因となります

また、アルコールには利尿作用もあり、睡眠中に尿意を感じることでも目が覚めてしまいます。

寝る直前のスマホは厳禁

スマホやPCにはブルーライトが含まれますが、寝る直前に目に大量のブルーライトを浴びると、脳が昼間と勘違いしてしまい、せっかく睡眠モードに入った脳を目覚めさせてしまいます。

スマホやPCの閲覧は就寝2時間~3時間前までに済ませておきましょう。また、就寝直前に興奮度の強いドラマや映画を見ても目が冴えて眠れなくなります。寝る直前に脳に強い刺激を与えるものは避けるようにしましょう。

まとめ

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日本人の睡眠不足は少しずつ改善されていますが、働き盛りの年代、とくに女性はまだ睡眠時間が足りてない人も多いようです。睡眠不足は、想像以上に心身に深刻なダメージを与えます。

睡眠不足は生活習慣病や、アルツハイマーなど身近な人に負担をかける病を発症するリスクも高くなります。睡眠の時間、質を少しでも上げるために生活習慣を見直して、健康的な生活を送れるようにしましょう。

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