お風呂は1日の汚れを落として清潔になれるだけでなく、リラックスできる時間でもあります。そのため、お風呂で寝てしまうという人もいるでしょう。
しかし、お風呂で寝るのはかなり注意が必要で、さまざまなデメリットやリスクがあります。この記事では、入浴中の睡眠で起こるデメリットやリスクと危険を軽減するための方法について紹介していきます。
この記事を読んでいただければ浴室を安全でリラックスできる場所にできるので、興味がある人はぜひ読んでみてください。
お風呂での睡眠で起こるデメリットやリスク
お風呂で寝てしまうことは、想像以上に危険です。ついつい寝てしまうという人も多いと思いますが、さまざまなデメリットやリスクがあります。
ここでは小さなデメリットから大きなリスクまでを紹介するので、ぜひ読み進めてください。
体の痛み
お風呂で寝ると首や腰などの体を傷めてしまう可能性が高いでしょう。
その理由は、浴槽が硬いことと同じ部分に長時間負担がかかるためです。浴槽はベッドのように柔らかい部分はありません。つまり、体重などの大きな負担がもろに体にのしかかるので、体を傷めてしまいます。
また、浴槽の場合は寝返りを打つこともできません。通常ベッドで寝ている場合は、寝返りを打つことで体にかかる負担を逐一分散しています。しかし、湯船の場合は寝返りができないので、同じ部分に長時間負担がかかり続けます。そのような負担を体に対して頻繁にかけていると、腰痛や肩こりの原因に。
お風呂で体に負担をかけないためにも、浴槽内で寝てしまわないようにしましょう。
肌へのダメージ
お風呂で寝ると肌トラブルを引き起こすリスクが高まります。
湯船に長く浸かって毛穴を開いてから汚れを綺麗に落とせば、美容にかなり効果的です。そのため、湯船に浸かったまま寝てしまっても、美容によいことはあっても悪いことはないと思っている人も。
しかし、お肌がふやけてしまうほど長く湯船に浸かると、天然保湿因子やセラミドなどの美容成分が流れ出てしまいます。また、皮脂なども必要以上に流出するので、乾燥肌になりやすくなるでしょう。
お風呂で肌トラブルを引き起こさないためには、40度程度のお湯に15分以上浸からないことが大切。お風呂で寝てしまうと何十分もお風呂に浸かることになるので、肌の乾燥を早めてしまいます。乾燥肌は肌の老化を早める要因ですので、長風呂には注意が必要です。
脱水症状
お風呂で寝るデメリットには、脱水症状を引き起こしてしまうリスクが上がることがいえるでしょう。
水場であるお風呂で脱水症状はピンとこない人も多いと思います。しかし、温かいお風呂に浸かっていると、想像している以上に大量の汗をかきます。起きている間であれば、のどの乾きや頭痛、めまいなどで水分が不足してきたことを認識できるでしょう。
しかし、湯船で寝てしまった場合は脱水状態に気づくのに遅れてしまい、けいれんや昏睡状態など重症化させてしまいやすいです。入浴中に寝てしまうことが多いという人は、水分を取ったりお湯の温度を下げるなどして、脱水症状を引き起こさないように対策を取ってから入るようにしましょう。
熱中症
脱水症状と同様に、お風呂で寝ると熱中症にかかってしまう可能性も高いです。
熱中症は夏の屋外で起こる事故と思われている人も多いでしょう。しかし、千葉科学大学の黒木尚長教授が2019年に実施した高齢者に対するアンケートによると、入浴中の事故の8割が熱中症という調査結果もあります。高齢者を対象にした調査ではありますが、注目すべき結果といえるでしょう。
また、黒木氏の報告によれば、湯船の温度が41度の場合は33分で、42度の場合は26分で体温が40.0度を超えて熱中症の症状が出始める可能性があると指摘しています。お風呂で寝てしまえば20~30分を超えてしまう可能性は高いので、熱中症になる危険性は高いといえるでしょう。
なお、お湯の温度が45度であれば約16分で体温が40度を超えてしまいます。熱いお湯に入るのを習慣にしている人は、お風呂で寝てしまうと熱中症にかかるリスクが高いです。十分に注意するようにしましょう。
心筋梗塞や脳梗塞
お風呂で寝ると心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こす場合もあります。特に寒い冬場に、お風呂場でよくある事故の1つです。
原因として考えられるのが、急激な温度の変化。たとえば、温かい湯船から寒い脱衣場などに行ったときに、心臓や全身の血管に大きな負担がかかって心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こしてしまいます。これはヒートショックと呼ばれています。
お風呂でよく寝てしまうという人の中には、湯船で目を覚ましたときに慌てて出たという経験があるのではないでしょうか。急にお風呂を飛び出ると温度差があるので、ヒートショックを引き起こす可能性があります。
お風呂場でのヒートショックは高齢者や持病を持っている人に多い傾向にあります。しかし、若くても心臓や血管に負担を与えると梗塞症を引き起こすリスクはあるので、決して油断はできません。
溺死
お風呂場で寝る最大のデメリットは、溺死する可能性があるということでしょう。これは若さや持病などに関係なく、すべての人に当てはまるデメリットです。
2020年の厚生労働省の人口動態統計によると、不慮の溺死及び溺水の数は6,948人にのぼります。すべてがお風呂での居眠りが原因とはいえないでしょう。しかし、お風呂で寝ると顔がお湯に浸って窒息をきたす可能性は十分に考えられます。もし強い眠気があったり酸欠などがあったり、悪い条件が重なれば若い人でも溺死してしまうでしょう。
人によっては、水を飲み込んで目を覚ましたという経験があるかもしれません。しかし、毎回それで目を覚ますわけではないので、お風呂で寝ると溺死してしまう可能性があることを理解しておくようにしましょう。
入浴中に寝てしまう原因
入浴中に寝てしまうことは、健康や美容にダメージを与え、命の危険すらあります。しかし、入浴中に寝てしまう人は後を絶ちません。
ここでは、お風呂で寝てしまう原因について紹介していきます。
脳の酸欠
入浴中にウトウトしてしまう原因の1つは、脳に十分な酸素を供給できなくなるため。
どういうことかというと、温かいお湯に浸かると体温が上昇するので、それを抑えようと血管を膨張させて熱を下げようとします。血管が膨張すると血圧が低下するので、血液の量が減って脳が酸欠状態に陥ってしまうというわけです。
どちらかというと、ウトウトしているというよりは、貧血のために意識が遠のいて失神しているといえるでしょう。
副交感神経へのスイッチ
お風呂で眠気を感じる原因には、副交感神経が優位になることも考えられます。
お風呂に入ると水圧がかかってマッサージ効果が得られたり、お湯によって体が温められたりして血行がよくなります。すると、リラックスしやすくなるので、体と脳はお休みモードに。
特にお風呂に入る時間帯は1日の仕事を終えてリラックスしやすい状態です。その時間帯に体を温めたりして副交感神経のスイッチをオンにするので、より寝てしまいやすい状況を作ってしまいます。
その結果、入浴中にも関わらず寝てしまうと考えられるでしょう。
入浴中の睡眠のデメリットやリスクを軽減する対策
お風呂で寝てしまって発生するデメリットやリスクを軽減することは可能です。ここではデメリットやリスクを減らす対策について紹介していきます。ちょっとしたことで健康と美容を守れるようになるので、お風呂で寝てしまうという人はぜひ実践してみてください。
お風呂カバーをつけたままの入浴
お風呂で溺れないために有効なのが、お風呂カバーをつけたまま湯船に浸かることです。
お風呂カバーをすべて取り外してしまうと、前のめりになったときに顔が浸かりやすくなります。また、お風呂カバーがあれば溺れたとしても手をかけられるので、沈んでいくリスクを減らせるでしょう。
特に壁面が垂直になっている湯船の場合は、後ろに持たれにくいので前のめりになりやすいです。その場合、お風呂カバーをつけたままにすると前のめりになってもお風呂カバーに顔が当たるので、お湯に顔が浸かりにくくなります。
万が一お風呂で寝てしまっても溺れないように、お風呂のカバーは外さないようにしましょう。
温度を基礎体温の+3度程度に設定
お風呂で寝た場合のデメリットを減らすには、お風呂の温度を基礎体温の+3度程度にするのがおすすめ。体温は36~37度の人が多いので、お湯の温度は39~40度程度がベストといえるでしょう。
39~40度はぬるく感じるので、もう少し熱いお湯に浸かりたいという人は多いと思います。しかし、41~42度のお湯で寝てしまうと、汗を大量にかくので熱中症や脱水症状になりやすいです。また、美容成分や皮脂が出ていきやすいので、肌へのダメージも気になるでしょう。
しかし、ぬるいと感じる程度のお湯であれば、これらのデメリットを軽減できます。お風呂で寝てしまうという人は、お湯を少しぬるめに設定しましょう。
飲酒後の入浴の禁止
夕食を終えてからお風呂に入るという人は多いと思います。しかし、その場合はお酒を飲んでから入浴をしないようにしてください。
お酒を飲んだ後は感覚や判断力が鈍ってしまうので、体の変化などに気づけず正しい判断ができません。また、お酒には利尿作用があるので、体内の水分が少なくなりがちで熱中症や脱水症状を起こしやすくなります。
もし、そのような状態でお風呂で寝てしまっては、通常よりも溺れてしまう可能性が高くなるでしょう。
また、お酒を飲むと血圧が下がるので、脳が酸欠状態に陥りやすい状態です。つまり、眠気を感じやすく寝てしまいやすいので、入浴前の飲酒は避けてください。
なお、お酒を飲んですぐにお風呂に入ると血の流れがよすぎるので、急性アルコール中毒を引き起こすリスクも高い状態です。安全にお風呂に入るためにも、飲酒後はお風呂に入らないようにしてください。
入浴前のコップ1杯の水分補給
お酒とは違い、入用前にぜひ飲んでほしいのがコップ1杯の水です。入浴前にコップ1杯の水分補給をすることで、さまざまなデメリットを予防しやすくなります。
たとえば、汗を大量にかくことで引き起こす脱水症状や熱中症。また、汗をかくと血中の水分量も低下することから、粘度の高いドロドロとした血液に変わってしまいます。すると脳梗塞などの病気を引き起こしやすくもなります。
お風呂で寝てしまいやすいという人はお風呂でかく汗の量が多くなるので、これらの病気を引き起こしかねません。ぜひ、入浴前にコップ1杯の水分を補給するようにしましょう。
なお、その際はミネラルが入った飲み物がおすすめ。汗にはミネラル成分が含まれているので、ミネラル不足になるのを防げます。
浴室の扉の開放
安全に入浴をするなら、浴室の扉を少しだけ開けて入るのが有効です。
扉を少しでも開けておけば、お風呂場で何かがあっても家族などに異変に気づいてもらいやすくなるでしょう。これだけでも脱水症状や溺死などのリスクを軽減できます。
また、脱衣所と浴室内の温度差を小さくできるので、湯船で起きてお風呂場を飛び出したとしてもヒートショックになりにくくなります。
同様に、浴室の窓を少し開けておくのもおすすめ。熱気がこもらず浴室内の温度が上がり過ぎないので、熱中症対策になります。もし窓がないという人は、換気扇を回しておくだけでも十分に効果が期待できます。
シャワーによる入浴
どうしても寝てしまいそうという日は、シャワーで済ませる判断も必要でしょう。これがお風呂で寝てしまわない効果的な対策です。
ただし、湯船に浸かってゆっくりとした方が、リラックス効果が高まって疲れも癒せます。そのため、眠気を感じていない日は湯船に浸かり眠気や疲れを感じている日はシャワーにするなど、状態に合わせて使い分けるといいでしょう。
そうすれば、安全にお風呂を楽しめるようになります。
まとめ
お風呂に入ると血圧が低くなるので、脳が酸欠状態になったりリラックス時に優位になる副交感神経が活発になったりして、眠くなりやすい状態に。その眠気によってお風呂で寝てしまうと体に大きな負担がかかるだけでなく、脱水症状や熱中症になったり溺れて溺死してしまったり大きなデメリットがあります。
この記事ではデメリットやリスクへの対処法を紹介してきましたので、お風呂で寝てしまうという人は対策を取って入浴するようにしましょう。そうすれば、安心してお風呂に入れるようになります。