睡眠ノウハウ

レム睡眠とは?睡眠サイクルを理解して質の高い睡眠を得よう

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睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類がありますが、それぞれがどんな役割を果たしているかはご存じでしょうか。

レム睡眠、ノンレム睡眠どちらが欠けても健康に深刻な悪影響が出ますが、レム睡眠が減ると、脳にも深刻なダメージを与えることがわかってきました。

今回はノンレム睡眠と睡眠のサイクルについての理解を深め、睡眠の質を上げる方法、睡眠サイクルが乱れてしまったときの対処法も合わせて説明します。

この記事の監修者
睡眠健康指導士、建築物環境衛生管理技術者
佐々木崇志
東北大学大学院薬学研究科修了。修士(薬科学)、建築物環境衛生管理技術者。 修了後は臨床研修指定病院で医局秘書や学生担当として全国の医療を志す学生や医療従事者と携る。勤務していく中で睡眠に関する訴えが医療従事者にも多い事に気づき、自身も医療従事者や患者の助けにならないかと考えるようになり個人で活動を始める。現在は東北を活動の拠点として睡眠(体内時計・時計遺伝子)の研究の経験、資格の知識を生かしながら睡眠啓蒙活動を行なっている。

睡眠には一定のサイクルがある

睡眠サイクル

睡眠に関心のある人はすでにご存じかとは思いますが、睡眠には「レム睡眠」「ノンレム睡眠」の2種類があり、90分~120分ほどのサイクルを繰り返しています。睡眠は2割がレム睡眠、ノンレム睡眠8割がといわれています。レム睡眠、ノンレム睡眠はそれぞれに大事な役割を担っています。

寝入りばなは「ノンレム睡眠」が訪れます。脳も体も休んでいる状態です。ノンレム睡眠に後に訪れるのが「レム睡眠」です。睡眠中に目が動くことから「急速眼球運動(Rapid Eye Movement)」の頭文字をとってレム睡眠とよばれるようになりました。脳の働きが活発ですが、筋肉は完全に休んでいる状態で体は動きません。

少し以前までは、夢はレム睡眠時に見るものと考えられてきましたが、最近ではノンレム睡眠時でも頻繁に夢を見ていることが確認されています。ただ、ノンレム睡眠時は脳の動きが鈍いため、夢を見ていても夢を覚えていることはできません。覚醒したときに内容を覚えている夢はレム睡眠時に見た夢です。

実は睡眠中に脳が活発に動いているというのは不思議な状態であり、レム睡眠は、ノンレム睡眠に比べてまだ解明されていない部分が多いのです。しかし、睡眠時にノンレム睡眠からレム睡眠に移行する際、無理やり起こしてレム睡眠を奪うと、次に入眠した際はレム睡眠から睡眠が始まることがわかっています。どうやら、ヒトは本能的にレム睡眠を死守しようとしているようで、健康と切り離せない重要な役割があるのは間違いないようです

レム睡眠が少ないとどうなる?

睡眠不足は、ときによっては命の危険につながるほど健康に悪影響を及ぼします。米Stanford大学はレム睡眠とノンレム睡眠が果たしている役割について調査した結果、レム睡眠が5%減少するごとに死亡リスクが13%増大すると報告しています

この研究では、米国内で65歳以上の男性5,994人を対象に長期にわたって睡眠に関する追跡調査を行っています。参加者に睡眠ポリグラフ計と身体活動モニターを装着した状態で就寝してもらい、睡眠中の脳や身体の変化を記録し続けました。

睡眠中にレム睡眠が発生する割合は0%~43.9%、平均は19.2%という結果でした。分析に足るデータが得られた2,675人(平均年齢76.3歳、男性のみ)のうち、約半数にあたる1,404人が12年間の追跡調査中に死亡が確認されています。

レム睡眠に関連すると思われる死亡原因を分析、調査した結果、レム睡眠の割合が5%減少するごとに死亡リスクは13%上昇するということが判明しました。

その後、さらに30歳から60歳まで、若年層、女性も含めて調査が行われました。充分なデータがとれた1,386人分(平均年齢51.5歳、男性54.3%)では、約21年間で184人(13.3%)の死亡が確認されています。

追跡期間、平均年齢の違いはありましたが、死亡リスクでも前回の追跡調査とそれほど変わらない結果が出ています。

また、レム睡眠とノンレム睡眠の3ステージN1(浅い眠り)N2(中程度の眠り)N3(深い眠り)と生存の関連を調べた結果、生存との関係が最も深いのはレム睡眠であることもわかりました

レム睡眠は脳をリフレッシュさせる

レム睡眠が少ないと、アルツハイマー病など認知症にかかりやすくなるということもわかっています。筑波大と京都大は、マウスを使った実験で、レム睡眠中の脳の毛細血管中の赤血球の流入量がノンレム睡眠時の2倍になっていることを発見しました。

レム睡眠中に脳内の毛細血管で血流が活発なり、物質交換が行われていたのです。このことから、レム睡眠が少ないと大脳皮質の神経細胞の物質交換の量が減り、老廃物が溜まることで脳機能の低下や老化が進むことで、認知症リスクが高まる可能性があるのです。

また、レム睡眠中の血流の増加は、睡眠に必要なアデノシン受容体が重要な役割を果たしていることも確認されています。アデノシンは体が疲労したときに出る物質です。アデノシン受容体に結合すると、覚醒作用のあるヒスタミンの分泌が抑えられ、ヒトは眠気を感じます。

カフェインはアデノシン受容体と結合してアデノシンが受容体と結合することを阻むため、ヒスタミンの放出量が多くなり、眠れなくなります。寝る前にコーヒーを飲んではいけないのは、カフェインがアデノシン受容体の働きを阻害するのが原因です。

理想の睡眠時間はどれくらい?

睡眠時間

睡眠は「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」が交互にやってくるのは、先述した通りです。このサイクルは、90分~120分の間隔で行われますが、質の良い睡眠はこのサイクルを4回~5回繰り返し、目覚める直前の睡眠はレム睡眠であることが理想的です。脳も体も休んでいるノンレム睡眠は目覚めづらく、かなりの不快感を生じます。

このサイクルを保つためには7~8時間が理想とされていますが、個人差があるので一概には言えません

年齢とともに必要な睡眠時間は変わる

とくに、歳をとるにつれて夜中に目が覚める深い睡眠がとれなくなるなどといった悩みを抱える人が増えてきます。しかし、歳をとるにつれ睡眠が浅くなるのは自然なことであり、70歳以上で朝までしっかり眠れる人は、むしろ少数派です

歳を取ると、若いころのように多量のエネルギーを消費することがないため基礎代謝が落ち、睡眠もそれに合わせて短い時間で間に合うようになります。

また、睡眠中は外からの刺激で目が覚めないように脳が制御しているのですが、歳をとるとこの働きがうまくいかなくなることも睡眠が浅くなる原因のひとつです。

高齢者が睡眠中に目が覚めてしまうのは、眠れないのに早く床についてしまうことが原因のことも多く、早寝をやめるだけで安定した睡眠がとれるようになることも珍しくありません。また、睡眠不足が不安だからといって昼寝のし過ぎも安眠の妨げになります。

「横になっているだけでも体を休めることにつながる」といわれていたこともありますが、現在では否定されています。眠れないのに無理に寝床に居続けると、むしろ不眠を助長させることになりかねません。

高齢者の不眠のほとんどは、無理に寝ようとして眠れないのにずっと寝床にとどまっていることが原因です。個人差はありますが、70代に必要な睡眠時間は6時間程度といわれています。80代になると5時間半程度です。若いころのように8時間寝ようとしても寝られるものではないことが、おわかりいただけると思います。

ある程度歳をとってきたら、睡眠は浅くなるもの、短くなるものと割り切って、時間にこだわらずに自分にあった睡眠時間を見つけるようにしたほうがよさそうです。

睡眠の質を保つために必要なこととは

生活習慣

睡眠の質を上げるには、不眠になりやすい生活習慣を変えていく必要があります。できるところから、少しずつ変えていきましょう。

食生活の改善

毎日の食事は、3食を規則正しく摂ることが基本です。夜、就寝直前に食事をすると消化が活発になるため、熟睡できません。また、不規則な食事は肥満の原因になり、不眠の原因となります。

ダイエット中、食欲がないなどの理由で朝食を摂らないのもNGです。起床直後の脳は、エネルギーが不足しているため、仕事や勉強がはかどりません。そのイライラでストレスがたまり、不眠につながる可能性もあります。朝食は最低限、タンパク質と糖質を補給するようにしましょう。

また、寝る直前の飲酒、コーヒーなどカフェインを多く含んだ飲食物の接種も途中覚醒の原因になります。

適度な運動

質の良い睡眠には、運動も欠かせません。定期的な運動習慣がある人は、不眠で悩むケースが少ないことが世界中のさまざまな調査で明らかとなっています。眠気は夜、脳の温度が低下する際に出現しますが、就寝の2~3時間前に、一時的に脳の温度を上げると脳の温度を効率よく下げることができます。

運動は、ウォーキングや軽いジョギングなど、毎日無理なく続けられる有酸素運動がおすすめです。就寝の3時間程度前に行うと、寝つきがよくなります。寝る直前の激しい運動は逆効果です。夜はヨガやストレッチなど、ゆったりとした動きでリラックスした気分になれるものを選びましょう。

お風呂でリラックス

入浴も脳の温度を上げる効果があります。入浴のタイミングも、運動と同じく就寝の3時間ほど前が効果的です。寝る直前の入浴は深い睡眠をとれなくなります。お風呂の温度は40℃前後のぬるめで30分ほどゆっくりつかりましょう。熱めの温度が好みの場合は、5分程度で湯船から上がると、体温が上がりすぎません。

毎日シャワーのみでは、体がしっかり温まらず、安眠できなくなる可能性があります。忙しくても、週に何度かは湯船につかる習慣をつけましょう。

睡眠環境を整える

自分に合わない寝具を使用し続けることも安眠の妨げになります。枕は高すぎても低すぎても首や肩に負担をかけ、肩こりや首こりの原因になったり、寝返りが打ちにくくなったりします。

睡眠時の姿勢は立っているときと同様、背骨が緩やかなS字カーブを描いているのが理想ですが、古くて、へたれているマットレスや、柔らかすぎて腰が落ちてしまうものは、やはり寝返りがうちにくく、質のよい睡眠がとれません。

部屋の温度、湿度も重要です。ヒトが快適に寝られる温度は20℃~25℃、湿度は40%~60%程度です。エアコンの温度や寝具を適度に変えて調節しましょう。

就寝直前のスマホ閲覧は避ける

スマホやPCに含まれるブルーライトを寝る直前に目に大量に浴びると、脳が昼間と錯覚して目が冴えて眠れなくなります。寝る2~3時間前になったらスマホの電源は切り、どうしても何か読みたい場合は紙の本や雑誌に切り替えましょう。

睡眠のサイクルを戻す方法

睡眠不足解消

職種や仕事が繁忙期を迎えている場合は帰宅が遅くなるなど、睡眠のサイクルが崩れてしまうことも珍しくありません。しかし、健康のことを考えると、睡眠のサイクルは早めに修正する必要があります。

睡眠時間が短い場合

充分な睡眠時間が確保できず就寝時間が遅くなった場合でも、8時間ほど寝たら一度起床しましょう。長時間寝ても疲労感はそれほど変わらないだけでなく、寝すぎは睡眠のサイクルを崩してしまいます。まずは、通常通り起きて睡眠のサイクルを戻すことに重点を置きましょう

起床時間がいつもより早い場合

普段より早く起床する必要がある場合、たとえば普段より3時間ほど早く起きる必要がある場合は、就寝時間を2時間早めましょう。ただ、睡眠時間は最低でも6時間確保する必要があります。睡眠時間が1時間ほど短くなっても、常習化しなければ日常生活にそれほど影響はありません。

普段寝ない時間に寝るのは難しいかもしれませんが、徹夜してしまうと昼間の活動に悪影響が出ます。少しでも多く睡眠をとるように心がけましょう。

夜勤の場合

夜勤をしなければならない場合は、前夜までは普段通りに就寝します。その日の夕方からの夜勤でも、普段と同じ時間に就寝しましょう。夜勤明けは帰宅してもすぐ眠ってはいけません。日中に寝ると睡眠のサイクルが崩れてしまいます

夕飯を早めにし、2時間程度休息してから就寝し、翌日は普段と同じ時間に起床しましょう。

まとめ

睡眠サイクルまとめ

レム睡眠もノンレム睡眠も健康の維持や脳機能の働きに欠かすことはできません。2つのサイクルがスムーズに行われるよう、充分な睡眠時間を確保するようにしましょう。レム睡眠は記憶の整理、定着だけでなく認知症機能の予防に大事な役目を果たしています

仕事の都合上、どうしても睡眠のサイクルが乱れてしまう場合は、なるべく早めにサイクルを戻す方法を実行することが大事です。自分にあった睡眠時間、睡眠環境を整えて健康的な生活を心がけましょう。

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